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秒読み開始! フルサイズ対応の大口径標準ズーム
35mm判対応の標準ズームである。同社が来春発売と公表している現在開発中のフルサイズの撮像素子を搭載したデジタル一眼レフカメラに先駆けての登場だ。ペンタックスの開放F2.8大口径のフルサイズ対応標準ズームレンズといえば、1994年に発売されたPENTAX FA★ 28-70mm F2.8 ALまでさかのぼることになる。
本レンズの絞りリングをなくした外観、超音波モーターの搭載、防滴構造の採用など両者の違いに時代の開きを感じる。大口径標準ズーム、久しぶりの登場である。
ワイド端は24mmになったが、大きさや重さはFA★28-70mm F2.8ALと同程度で、大口径標準ズームとしてはコンパクトにまとめている。とはいえ、現行のAPS-Cサイズのデジタル一眼レフにつければ37~107mm相当で、ワイド側が37mm止まりとなると少々抵抗を感じる。やはりフルサイズのカメラで使いたいズームレンズだ。
重量級のレンズだが、AF作動はスムーズである。MFへの移行もクイックシフト・フォーカス・システムにより、切り替え操作不要で対応できる。このあたりの仕様は他の現行レンズと変わることなく、安定しており、使用感は良好だ。
実際に画像を見ても優秀である。絞り開放時ではやや甘さが残るものの、少し絞れば改善し、f4からf11の描写は周辺まで均一で、安定感がある。ほどよいコントラストで、絞り込んでもカリカリになることもない。階調はなめらかで張りついたようなシャープな線描写が美しい。安定した絞りf4以降では、焦点距離によらず同質の描写が得られ、絞りによる差は被写界深度の違いのみだけに集中でき、使い勝手がいい。ボケ味も自然であり、HDコーティングにより逆光にも強く、悪条件下でも、ソツなく結果が残せる。
今回はフルサイズ対応レンズということで、35mm判のフィルム一眼レフでも使ってみた。APS-Cサイズのデジタル一眼レフでは使われないイメージサークルの周辺部を見てもしっかりしていて、考慮されていることが確認できた。
あたりまえのことだが、35mmフィルムで写っていることに感動してしまう。このサイズが普通だった時代に思いを馳せ、デジタルでもいよいよフルサイズで撮れるのかと思うと、気持ちが高ぶる。
●フィルムで撮影
Kマウントのフィルム一眼レフに装着したときは、MF限定ながら使用できる。今回はZ-1Pを使った。レンズに絞りリングがないため、露出モードの絞り優先、シャッター優先が使えないが、ハイパー制御のプログラムAEで両優先的な使い方ができるため支障はない。一方、MF一眼レフになると絞りの制御ができず、絞り込まれた状態で固定され、写すことはできるが実用とはいえない。制限はあるものの、結果を見てみると、フィルムでも焦点距離や光線状態にかかわらず安定した結果が得られる。
◆ 竹中隆義
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●焦点距離・F値:24~70mm・F2.8●レンズ構成:12群17枚(非球面レンズ3枚、特殊低分散ガラス3枚、異常低分散ガラス非球面レンズ1枚)●最短撮影距離:0.38m●最大撮影倍率:0.20倍●画角:61°~23°●フィルター径:Φ82mm●大きさ・重さ:Φ88.5×109.5mm・787g●価格:税別21万円(実売18万円)