実はこんなことになった理由は自分にもあり、というのはここ8年ほど渋谷を避けているのだ。工事のたびに巨大化する駅は、同じ名前の駅とは思えぬほど長い距離を歩かねば乗り換えができなくなり、それでも渋谷駅を利用する限りは黙って「当局」の言いなりになるしかない。それはよく考えたらえらく恐ろしいことのような気がして、利用そのものを見直した。個人的にマイナーな抵抗運動をしているのである。
でも、渋谷を避けているという話をすると、案外8割くらいの人が「わかる!」とおっしゃるんですよね。わかりにくい、行きたい場所がない、人が多すぎる、など理由は様々だが、共通しているのは、もうあそこは「自分の街」じゃないという思い。誰のため、何のためなのかトンと分からぬまま馴染みの場所がどんどん壊されていく街への違和感と悲しみ。そんなものを置き去りにしてどこまでもピカピカになっていく渋谷が私は怖い。
※AERA 2024年6月3日号