東大が各大学の値上げの“先駆者”に

 Aさんのように経済的に苦労している学生にとって10万円は大きな金額だが、これから東大を目指そうとする全国の学生、保護者にとっても“重い”値上げになりそうだ。

 受験予備校の顧問などを歴任し、自らも東大出身の精神科医・和田秀樹氏はこう指摘する。

「東大が値上げするということは、各大学の値上げの先駆者なることを意味します。いま、国立大は行政法人としてそれぞれ独立してはいますが、東大が国立大学の代表格であることは変わりません。他の国立大が授業料の引き上げをすることのハードルを下げてしまう要因になってしまうと思います」

 東大が値上げをして、他の国立大がそれに追随する状況になれば、そもそも、「大学に行く」という選択肢を学生や親から奪ってしまうことにつながりかねないと、和田氏は警鐘を鳴らす。

「特に地方では、親の経済状況が厳しく、早稲田や慶応などの私立大学を選択肢に入れることができずに、実家から通える地元の国立大学を目指す子が増えています。東京大に追随して地方国立大も値上げをしてしまったら、そうした選択をした家庭にとって、非常に大きなダメージになる可能性が高いのです。今は少子化で大学経営が大変なことはわかりますが、学費を上げて大学の収入を増やすよりも、高等教育予算を増やし、なるべく家計の教育負担を減らしたほうが、はるかに教育の質が上がりますし、日本の競争力が高まると思います」

 国立大最難関の東大だからこそ、「10万円」の学費引き上げとなれば、多方面に影響を与えそうだ。

(AERA dot.編集部・小山歩)

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