「彼は179センチで106キロ」「あの一番は平成2年三月場所の11日目」など、取材では数字が次々に、スラスラと。圧倒されました(撮影/編集部・小長光哲郎)

「まだ伸びしろがあるのにもったいない。真っ向勝負を続ければ横綱への道も開けてくるはず。そもそも最近の力士は稽古が足りません。だから粘り強さ、つまり『残った、残った』のない大味な相撲が増えました。現役で稽古量が多いのは大関・霧島ですね。その姿を見ていると、ひそかに応援したくなります」

 今回、ぜひ聞いてみたいことがあった。歴代最強の横綱は誰なのか。即答だった。

「双葉山を別格として、一に大鵬、二に北の湖。三、四、五はその人の思い入れによって栃錦、千代の富士など、意見が分かれるでしょうね。私なら初代・若乃花(横綱在位昭和33〜37年、貴ノ花の兄)を推したいです」

 杉山さんは白鵬については、まだ辞めて間もないからあえて入れない、と言う。でも「間違いなく強い」とも。

「千代の富士と白鵬が十番とったら、白鵬が六番か七番勝つでしょう。北の湖と白鵬も伯仲しただろうけど、四分六で白鵬が勝つかもしれません」

 もう一人、忘れてはいけないのが元横綱・貴乃花(横綱在位平成7〜15年、父は貴ノ花)だ。杉山さんは、相撲界を離れることになったことに「残念です」と複雑な思いをのぞかせつつ、「現役時代の貴乃花は、歴代で五本の指に入る立派な横綱だった」と話す。

「白鵬との勝負でも五分か、貴乃花がやや優勢だったと見ます。お兄ちゃんの三代目若乃花も白鵬と相撲とらせたかったなあ。ひじょうに考えて相撲をとる人だったから、勝てなくても、館内を大いに沸かせたと思うよ」

 そう語る杉山さん、何とも活き活きと楽しそう。もちろん私も。ずっと話を聞いていたい、そんな至福の時間だった。

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年3月11日号

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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