当事者がつながる重要性
―― 生殖補助医療について私が取材・執筆を始めてから、30年以上になります。周囲に相談する勇気が持てず、孤独に陥ってしまう人を多くみてきました。それは生殖補助医療で子どもを得た人たちにも言えることだと思います。当事者同士がつながることによって感情を共有できれば、孤独から逃れることができる。それぞれが堂々と人生を生きる上で、極めて重要だと思います。
伊藤 はい、そう思います。オープンチャットも運営していて、私または当事者とつながり続けたい人たちを匿名でつなぎ、治療中の婚姻夫婦のグループ、出産した婚姻夫婦のグループ、FtMのグループ、シングル・同性カップルのグループ(人数が多すぎるため上記交流会参加者のみ)をつくりました。相互に情報交換を行ってもらっていますが、法整備のことや参考になる情報があれば、私からも投稿しています。こうした個別相談はボランティアで行っています。
知見を共有し、助け合う
クリオスは退職しましたが、日本でクリオスを新たに利用する人は引き続きいますので、クリオス利用前の婚姻夫婦の面談(クリオスからの紹介)を、今も病院とご夫婦のために続けています。提供精子を使った生殖補助医療を受けるにあたり、知っておくべきことや考えておくべきことはたくさんあり、それを説明しています。
クリオスを利用した方からも、今もメールやオンライン面会の依頼が届きます。妊娠・出産の喜びの報告もあれば、産後に不安を抱えた女性と話すこともありますし、転院や治療法の相談、公認心理師の紹介、クリオスでの手続きの相談など、ほぼ何でも屋です(笑)。
今後も、つながった皆さんと知見を共有し、助け合っていきます。
(構成/ジャーナリスト・大野和基)