「子どもの出自を知る権利」の重要性や、家族が直面する悩みについて語る伊藤ひろみさん(撮影/大野和基)

親が直面する悩みや壁がある

 精子提供によって子どもが生まれた後も、たとえば子どもの出生について周囲の誰にどこまで話すべきかであったり、子どもが学校で精子提供のことを話してしまったらどうするかであったり、親となった人が直面する悩みや壁はたくさんあることが多いです。子どもへは「早期に告知しよう」と決めて治療を受けていても、出産していざ話すタイミングになると緊張してしまって、少しでも多くの具体例を改めて聞きたいというご夫婦もいます。

 皆さんがクリオスを知るきっかけをつくったのは私ですから、私がやるしかないと思っています。

 直近の1年で、当事者交流会の開催、「婚姻夫婦(無精子症を中心に、男性不妊やFtM〔女性の体で生まれてきたものの、男性として生きることを望む人〕も参加)のオンライン交流会」「出産済みのご夫婦のリアル交流会@東京」「シングル・同性カップルのオンライン交流会」を開催しました。そうして得たつながりは今後も維持していきます。Xの実名アカウントも残していますので、必要があれば当事者はいつでも私と連絡を取ることができます。

生殖補助医療は「できたら終わり」ではない

 生殖補助医療は、他の医療と違って、「赤ちゃんができたら終わり」ではありません。たとえば、東北在住同士、同じ県に住む人同士など、居住地の近い当事者ファミリー同士を紹介し合ってつないだり、治療について悩んでいる人に、同じ悩みを解決した人や乗り越えたた人を個別に紹介したりしています。

 5月中に、私と交流のある人に限ってですが、クリオスを利用して出産したご夫婦への現状調査も開始します。

 たとえば、精子ドナーが外国人の場合、親が日本人の見た目でも「ハーフ?」と周囲から聞かれてしまうこともあります。そうしたときの対応や、告知の方法やタイミングなどについての経験を、当事者同士で共有する目的で行うアンケート・ヒアリングです。質問を、精子提供で生まれた自分の娘(8歳)に聞き、回答を皆さんに共有することもあります。

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