KISS/2023年12月2日、米ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンでラストライブ。その模様は全世界に配信されたが、最後まで定番セットリストだったのも彼ららしい(写真:AP/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

 ロックの誕生から約70年。メンバーの高齢化に伴い、ロックバンドが“終活”を始めている。KISSはアバターとして活動継続など、それぞれの形でキャリアの幕引きを迎えており、リスナーたちにも同じ現象が起きているというAERA 2024年5月20日号の記事を紹介する。

【写真】キング・クリムゾンはこちら

*  *  *

 大物バンドたちの終わり方はさまざまだ。バンドによってそれぞれの事情があり、それぞれのやり方がある。音楽評論家の伊藤政則さんは、こう話す。

「KISSの場合は、あのメイクをしてあの重たい衣装を着てパフォーマンスしなければいけないわけだから、いくら彼らが日々体を鍛えていても、やっぱり限界があるわけだ。もともとTシャツにジーンズで演奏するバンドだったら、まだやってたかもしれないよね。

 ただ、彼らは長くあの形でやってきたことで、完全にキャラクターになった。実際、ベースのジーン・シモンズは『KISSは何をやっても許される』というようなことを言っていたしね。だから彼らがアバターになって活動を継続するというのは、実に彼ららしい。他のバンドにはできない。そういう意味では、やはりKISSは希有な存在だよ」

 “終活”を始めたバンドには、KISS、エアロスミス、スコーピオンズ、ジューダス・プリーストと、なぜかハードロック/ヘヴィーメタル系が多いことに気がつく。そして同じように“終活”に意識的なバンドが多いもう一つのジャンルが、プログレッシブ・ロック(プログレ)だ。

 70年代前半に一世を風靡したこのジャンルのバンドたちは、やはりそれぞれの形でキャリアの幕引きを迎えている。キング・クリムゾンは2021年11月から12月に来日公演を行ったが、その際にベースのトニー・レヴィンは「これがクリムゾンの最後のツアーになる可能性が高い」と発言した。実際、クリムゾンとしての活動はそれ以来行われていない。

バンド名のみ継続も

 またジェネシスは2022年3月のロンドン公演でフェアウェル・ツアーを終了。55年の活動に幕を下ろした。

 一方、「ファイナル」とは銘打っていないが、変わった形でツアーを行ったのがエマーソン・レイク&パーマー(EL&P)。3人の中でただ一人存命のドラマー、カール・パーマーが、キーボードのキース・エマーソン、ベース&ボーカルのグレッグ・レイクの生前の映像と“共演”するという趣向だ。昨年末には来日公演も行われ、多くの観客を魅了した。

暮らしとモノ班 for promotion
【7/16(火)・17(水)開催決定】Amazonプライムデーは年に一度の大型セール!先行セール商品一部公開中
次のページ