しかし、3年ほど前にゲーム作りをやめた。周りから「すげえな」と反応されるようになったからだ。
「こだわりたくなって、ゲーム性が強くなっちゃったんです」
深いゲームを作るのは違う。プレーして楽しくなる、その初心を忘れかけていた。
ゲーム作りを休止して約1年後のこと。麒麟の川島明さんが、楽屋で不意にこう言った。
「ゲーム作ってないの?」
「そうっすね」
「そうなんや」
なんだか川島さんが寂しがっているような気がした。
「たぶんですけど、川島さんは僕と同じで、ゲームとか漫画を楽しんだ子どものときの気持ちを今も持ち続けているんじゃないかなと思うんです」
そんな川島さんに言ってもらえたのがうれしかった。
「子どもの頃、お金の問題とかでやってみたくてもできなかったけど、大人になればできることってあるじゃないですか。自分は大人になったのに、好きなことをしないのは、もったいないよなって」
あったらいいな。そう思えるゲームを作ってみたい。
「今ならできるんだっていうのが爆発したんですかね」
ゲーム作りを再開し、「R-1」で優勝した。
■たとえ勉強が苦手でも
情報科目は22年度から高校で必修になっている。ゲームが好きな子どもが、情報科目を苦手に思わないだろうか。野田さんは今春から「NHK高校講座」の情報Iに出演する。
「僕はマジで学校の勉強が全くできなかった。それでもプログラミングできるし、楽しい。そう伝わればいいなと思っています」
野田さんは今も新作ゲームを作っている。
「プログラムをコツコツコツコツと打ち込んでいくのが、本当に楽しいんです」
こうやったら、この動きになるのかな。移動中も考えて、メモ帳にコードの構成を書く。
でも「究めないようにしているところがあります」。
いつか映画「サマーウォーズ」に登場した仮想世界「OZ(オズ)」を作ってやろうと思っていた。世界中の人が行政手続きもゲームもなんでもできる空間だ。しかし、そんな壮大な世界を作るのは自分には無理だと早々にわかった。
「自分がプログラミングで大きく成功することはないっていう自覚はあるんで、深掘りしすぎないようにしています。でも、プログラミングに笑いを取り入れることはできる。そこを深掘りしていきたい」
(構成/編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年4月10日号