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 ハラスメントが社会問題化し生きやすくなった一方、上司は「何がNGか」敏感になり、防御一辺倒の管理職が増えている。その結果、職場でのコミュニケーションの崩壊が起きている。いま向き合うべきは何か。AERA 2024年5月13日号より。

【調査結果】ハラスメントを気にしすぎだと思う派が最多なのはこの年代!

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 パーソル総合研究所の「職場のハラスメントについての定量調査」によると、2021年にハラスメントが理由で離職した人は全国で推計約86万5千人。全就業者の34.6%が職場で過去にハラスメントを受けた経験がある、と回答した。いまやハラスメント対策抜きに職場は回らないのが実情で、多くの管理職に見られるのが、特定のシーンの言動を念頭に、あらかじめ「どこまでがNGで、どこまでがOKか」を把握しようとする「線引き思考」だという。

線引き思考は自分本位

 犯罪に該当するような暴力行為は論外として、何がハラスメントに当たるかは上司と部下の個別の関係性によって大きく変わる。それを無視する線引き思考は「ハラスメント対策への有効なアプローチとは言えません」と強調するのは、同研究所の小林祐児上席主任研究員だ。

「線引き思考は結局、自分のことしか考えていないんです。相手とのコミュニケーションや信頼関係など個別具体的な対人関係を考慮せず、自分がこう振る舞ってさえおけば大丈夫という閉じた思考の人が陥りがちです」

 ハラスメントが社会問題化したこの数十年来、管理職向けの研修で重宝がられてきたのは、まさにこの「何がNGか」を伝授するハラスメント対策だった。その結果、防御一辺倒の管理職が増えたことによる「壮絶な副作用」が起きている、と小林さんは指摘する。

「上司と部下のコミュニケーションの崩壊です」

回避的なマネジメント

 パーソル総合研究所の調査では、「飲み会やランチに誘わないようにしている」と回答した上司は75.3%、「ミスをしてもあまり厳しく叱咤しない」が81.7%。「必要以上にコミュニケーションをとらない」が60.3%。ハラスメント対策に厳格な上司ほど、こうした「回避的なマネジメント」に走る傾向が浮かんだ。また、「上司からのフィードバックが少ない」と感じるなど上司との距離を感じている部下ほど成長実感が低いとの結果も得られた。別の先行研究では、「放任型」の上司がいる職場ほど、パワハラやメンタルヘルスの不調が発生するリスクが高いことも明らかになっている。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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