出口さんの人生を支えた本 ハドリアヌス帝の回想 マルグリット・ユルスナール 著

 APUは、多様な人が集まって、それぞれの考え方を知ったり、折り合いをつけたりしながら学んでいくことができる場所です。こういう場所で学び続ける人がもっと増えてほしいと思います。今の日本の大学は、多くの若者が学ぶ場所ですが、これからのAPUは、米山裕・現学長のもとで、国籍のダイバーシティーを超え、若者だけに限らず、性別、年齢、国籍に関係なく、学びたいと思った人は誰でも学び続けられるインクルーシブな場所を目指していきます。僕は、それをしっかりバックアップしていこうと思っています。

女性の地位上げるため

──現在の日本の状況については、どう感じていますか?

出口:本当に大変な状態です。何よりも赤ちゃんがたくさん生まれないこと、出生率の低下が大きな問題だと思っています。2022年の出生率は、明治32年に調査が始まって以来最低になりました。7年連続で低下しています。その速度はもう取り返しがつかないところまで来てしまいました。

出口さんの人生を支えた本 預言者 カリール ジブラン著

 根本的な原因は「男女差別」ではないでしょうか。去年発表されたジェンダーギャップ指数を見れば、日本は世界で125位、G7で最下位です。分野別で言えば、管理職数で133位、国会議員数で131位、閣僚数で128位。こんなに低くて恥ずかしいとしか言えません。

 非正規雇用も圧倒的に女性が多く、働き方がこんなに多様になっているのに男女差別が根強く残っているのはおかしい。女性が差別され、生きづらい社会の中では、子どもを産み育てようとは思えないですよね。

 でもこれは、女性が頑張っていないということではありません。すでに頑張りすぎている。女性たちの努力だけでは、もうどうにもならないのです。

 でも逆に言えば、女性の地位を上げるために社会ができることはいっぱいあるということです。基本はなんでも全部、男女比を1対1にする。政治も会社も、交ぜることをないがしろにして男ばっかりでやってきたことを、制度から変えていくしか方法はないでしょう。

 僕もこれからの人生は、女性の地位向上のために力を入れていきたいと思っています。具体的に何ができるか、これから考えていきたいですが、いろんな人に会って、話して、少しずつ変えていけるように行動していくしかないと思っています。2030年までには、企業や政治など、男女の数を同数にしたい。それが僕の夢です。

(構成/編集部・大川恵実)

AERA 2024年5月13日号

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