出口さんの人生を支えた本 道しるべ ダグ・ハマーショルド 著

 倒れる前にこれをやっておけばよかったなと後悔していることもありません。もしやっておけばよかったと思うことがあれば、今からやればいいだけのことです。何より今日の自分が一番若いのですから。

人・本・旅を実践する

──出口さんにとっての幸福とは何でしょう。

出口:僕が考える幸せな人生とは、よく寝て、よく食べることができる人生です。これに加えて本を読んで、考えることができる人生は豊かですよね。

 幸せな人生を送るために読むべき本ですか? なんでも好きなものでいいと思います。もし僕が無人島に行くとして、1冊だけ本を選ぶとするなら「聖書」ですね。聖書には考え方や、人のいろいろな面が見える出来事が書いてありますから。

 僕にとって大事なことは「人・本・旅」を実践すること。たくさんの人に会って、たくさんの本を読んで、旅をすることで世界が広がります。APUの学生にも、入学式や卒業式のスピーチで毎回そのことを話してきました。在学中に読んでほしい古典の本をリストにして紹介して。僕がキャンパスを移動していたときに「学長! あの時お薦めしてくれた本、読みました。とても面白かったです」と声をかけてくれたのがすごくうれしかったですね。

 今(2月の取材時)読んでいるのは、『マルセル・シュオッブ全集』(国書刊行会)と、ちくま新書の『世界哲学のすすめ』(納富信留著)です。全集の方は900ページを超える本ですが、中でも「少年十字軍」は名作です。

どんどんチャレンジを

──大学とは今後、学長特命補佐としてかかわっていきますが、今、学生に伝えたいことは?

出口:世界中の様々な場所で戦争や対立によって傷ついている人々がいることに、心を痛めています。でも、どんなに混乱する世の中でも、「社会をよくしたい」「世界を変えたい」と思う地球市民の若者たちが知恵を絞って、みんなで協力・連帯することで少しずつ世界は良くなっていくと思っています。それができると楽天的に考えています。

 そのためには、友達をつくってその人をもっと知ろうとしたり、貪欲に勉強したり、誰も行ったことのない場所や、やったことのないことにもどんどんチャレンジしたりしてほしいです。成功は、99回の失敗の後の1回だと考えて、何回失敗しても諦めずに挑戦することを続けてほしいと思っています。

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