下重暁子(しもじゅう・あきこ)/1959年、早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局し、アナウンサーとして活躍。民放キャスターを経て文筆業に。現在、日本旅行作家協会会長。『人生「散りぎわ」がおもしろい』『家族という病』『極上の孤独』など著書多数(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】『ひとりになったら、ひとりにふさわしく 私の清少納言考』

 大河ドラマ光る君へ」の放送で主人公の紫式部が脚光を浴びるなか、「私はこちらのほうが好き」と、『枕草子』の作者・清少納言について綴ったエッセイ。原文を読み込んだからこそ可能なリズムの味わい方、丁寧な読解に加えて、著者自身の人生経験や思い出を、無理なく自然に作品とからめた筆の運びが楽しい一冊となった『ひとりになったら、ひとりにふさわしく 私の清少納言考』。著者の下重暁子さんに同書にかける思いを聞いた。

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 若い時はよくわからなかったものが、年齢を重ねて深く染みこんでくることがある。下重暁子さん(87)の場合は『枕草子』がそうだった。

「昨年の夏、原文でずっと読んでいました。『枕草子』を読むのは3回目で、最初が国文科の大学生だった時。2回目が小冊子の連載のため。そして今回がいちばん真剣に読みました。現代の言葉と違うわけですから読解の苦しさはもちろんありますが、微妙なニュアンスなどは原文でないと伝わってこないということも今回よくわかりました」

 本書は清少納言と同じ女性、それも長く人生経験を積んだ女性が読む『枕草子』のガイドブックであり、同時に著者自身の経験や思い出を『枕草子』の世界観に重ねて綴ったもう一つの随筆である。本書が教えてくれるのは、例えば体言止めの多用について。有名な冒頭、「春はあけぼの」からして率直な体言止めから始まるすがすがしさがある。

「そして夏は夜。秋は夕暮れ。冬はつとめて。この畳みかける体言止めリズムのすばらしいこと。彼女は冬がいちばん好きで、冬のつとめて(早朝)、寒い中、炭火を持ちながら廊下を渡って宮中に出向く絵が見えるようじゃないですか」

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