ロンドン五輪で「死闘」となった中国戦
――ロンドン五輪の準々決勝・中国戦はフルセットですべて2点差の死闘でした。木村さんは引退会見の際に最も印象に残る試合として挙げていました。
当時の眞鍋(政義)監督が大会前から、「中国と準々決勝で当たる」と言い続けていたんですよ。実際は準々決勝前のくじ引きで対戦相手が決まるので分からないんですけど、「準々決勝で中国と当たる。中国を倒さないとメダルを取れない」って選手たちがイメージを共有していました。当時は、ロンドン五輪前の世界選手権で銅メダルを取ったり、ワールドグランプリでブラジルに勝ったり、それまで歯が立たなかった強豪国に勝ったことも、自信につながっていました。それまでは取材で「五輪でメダルを取れるように頑張ります」と言いながら、正直、「無理だよな、今は。世界で通用していないよ」と感じることもありましたが、あのときは「絶対にメダルを取る」という思いがチーム全員にありました。
――中国戦で木村さんは33得点をマークし、過去の五輪で1セットも取ったことがない中国を撃破しました。
小学校2年生でバレーを始めてから、あんな試合は経験したことがなかったですね。ゾーンに入っている感じだったのかなあ。「自分にボールを集めてこい」と思っていました。全セットが2点差でどちらに傾いてもおかしくない試合。メンバーが一人でもひるんだら一気にガタガタくるんですけど、誰の目を見ても力強かったし、全員が塊になってすごかった。みんなの気持ちが一つになって大きなパワーになっていました。日本の強みはチームワークで、まとまるとすごい力を発揮する。本当に楽しかったですね、あのチームは。