恐怖は細部に宿る

会場の世田谷文学館では、Tシャツやハンドタオルなどの展覧会オリジナルグッズの販売も。ここでしか買えないものも多数用意されている。       (撮影 写真映像部・松永卓也)

「第3章 怪画」では、『双一』シリーズの主人公である双一が描かれた原画が、「第4章 伊藤潤二」では、漫画家・伊藤潤二自身が登場する作品の原画が並び、その迫力と世界観に圧倒される。

 本展覧会を鑑賞してつくづく感じるのは「恐怖は細部に宿る」ということ。伊藤潤二によって描かれた眼球、頭、血管、皮膚といった人の器官があまりにリアルすぎて、見つめていると二日酔いの日の朝のような気分になってくる。そして人間は本来、非常にグロテスクなものの集合体なんだと気づかされる。伊藤潤二ファンはもちろんのこと、猛暑が予想される今夏、背筋の凍る思いを敢えて体感したい方にもおすすめの展覧会だ。

展覧会開催にあたり取材に応じた伊藤潤二さん。「描き下ろしの作品や『富江』のフィギュアなど、ここで初めて公開するものもあります。展覧会グッズもとても充実しているのでぜひ足を運んでください」(撮影 写真映像部・松永卓也)

◎伊藤潤二(いとう・じゅんじ)

1963年、岐阜県中津川市生まれ。漫画家。 歯科技工士として勤務する傍ら、雑誌「月刊ハロウィン」に初投稿した『富江』が「楳図賞」にて佳作を受賞しデビュー。以来、『首吊り気球』『死びとの恋わずらい』『うずまき』ほか発表。2019年『フランケンシュタイン』でアイズナー賞「最優秀コミカライズ作品賞」を受賞し、2021年『地獄星レミナ』にて「最優秀アジア作品賞」、同作と『伊藤潤二短編集 BEST OF BEST』が「Best Writer / Artist部門」を同時受賞、2022年『死びとの恋わずらい』にて通算4度目の同賞受賞。2023年、アングレーム国際漫画祭にて「特別栄誉賞」受賞。その他、受賞多数。国内外問わず読者から絶大な支持を得ている。

「伊藤潤二展 誘惑 JUNJI ITO EXHIBITION:ENCHATMENT」

2024年4月27日(土)~9月1日(日)

会場名:世田谷文学館2階展示室

https://jhorrorpj.exhibit.jp/jiee/

(取材・文 工藤早春)

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