養蚕の作業をする天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=5月30日、皇居内の紅葉山御養蚕所、宮内庁提供
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 皇族方が出席される公務や公式行事は、ときに皇族方のお気持ちや、ふだんの様子が垣間見える機会でもある。そんな公務の「あのとき」を振り返る(この記事は「AERA dot.」に2023年7月30日に掲載した記事の再配信です。肩書、年齢等は当時のもの)。

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 皇后雅子さまは今月19日、皇居で「御養蚕納の儀」に臨み、今年の養蚕の作業を終えた。皇后による養蚕は明治時代に始まり、大正の貞明皇后、昭和の香淳皇后、平成の皇后美智子さまと、約150年にわたって継承。令和に入ってからは、天皇陛下と長女の愛子さまも一緒に作業する光景が馴染み深いものとなった。いまでは世間で馴染みのない養蚕だが、実は小さくない役割を担っている。
 

「この子はちゃんと食べられるかしら」

 皇居にある「紅葉山御養蚕所」。仲間と離れてしまった1頭の蚕を見つけた雅子さまは、こう言葉をかけてほほえんだ。

 明治時代の日本の輸出産業の柱だった製糸業。明治天皇の妻である昭憲皇太后は、奨励のために養蚕を自ら行った。戦後に養蚕業は衰退したが、皇室では大切な伝統行事として歴代の皇后が守ってきた。

 紅葉山御養蚕所で皇后は、専門の職員と毎年5月から7月まで養蚕の作業にあたる。

 天蚕(てんさん)の種を和紙に貼り付けたものをクヌギの枝につける「山つけ」や、蚕を蔟(まぶし)という器具に移す「上蔟(じょうぞく)」、器具から繭を外す「繭掻き(まゆかき)」、繭の両端を切って成虫が繭から出やすくする「繭切り(まゆきり)」まで、雅子さまは天皇陛下愛子さまとほぼ一緒に、一連の作業をこなしてきた。
 

 平成の時代も、上皇さま美智子さまと一緒に繭を収穫することはあった。しかし、令和に入ると、生き物好きで知られる天皇陛下のご家族がそろって作業する機会が増えた。

 なかでも愛子さまは学習院初等科の3年生のときからお住まいで蚕を飼い始め、10年以上にわたって毎年、卵からふ化させているのだ。
 

正倉院宝物の復元にも

 7月19日の「御養蚕納の儀」では、雅子さまが収穫した純国産種の「小石丸」など3種の繭から紡いだ生糸を神前に供えた。この小石丸の保存に力を入れたのが、上皇后の美智子さまだ。

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国産の蚕の役割は