会見する乙武洋匡氏

 自民党が乙武氏の推薦を断念した日の夕方、それを待っていたかのように国民民主党は乙武氏の推薦を決定した。しかし国民民主党の推薦があるからといって、乙武氏の当選の可能性が広がるわけではない。実際に2022年の参院選東京選挙区では、小池百合子東京都知事の分身ともいえる荒木千陽前都民ファーストの会代表が国民民主党の推薦を得て出馬したが、東京15区では24万6424人の有権者が投票した中で、荒木氏は1万367票しか獲得できず落選した。

 しかも国民民主党は当初、フリーアナウンサーの高橋茉莉氏を東京15区で擁立しようとしたが、「法令違反に該当する可能性がある」と公認内定を取り消した過去がある。よって国民民主党の推薦が乙武氏にもたらす恩恵は、さほど大きくはないはずだ。

消えた小池百合子待望論

 一方で国民民主党にとっても、乙武氏を推薦するメリットは少ない。それでもあえてメリットを見いだすなら「東京都知事の小池百合子」という存在になるが、小池知事の経歴詐称疑惑が再燃しているため、黄信号が点滅している状況だ。

 昨年来の「政治とカネ」問題で自民党が逼迫(ひっぱく)する中、「初の女性首相としての小池百合子待望論」が一部でささやかれた。ところが東京15区補選への出馬説が具体化しようとした3月下旬、それまで国政への転出に積極的だった小池知事の動きが止まってしまった。折しも小池知事が頼りとする二階俊博元自民党幹事長が3月25日、次期衆院選に出馬しないことを表明した。

 そして4月10日には文藝春秋5月号が発売され、かねて噂された小池知事の「カイロ大学卒業疑惑」について、かつての側近の小島敏郎元都民ファーストの会東京都議団政務調査会事務総長と、カイロ時代のルームメートだった北原百代氏からの告発が公表された。小島氏は4年前の都知事選での疑惑隠蔽(いんぺい)工作の始終を暴露し、北原氏は小池知事が「カイロ大学卒業」を捏造(ねつぞう)した事実と主張している。

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江東区長選、八王子市長選で小池知事の力を借りた萩生田氏の今後