お手振りをはじめた天皇、皇后両陛下を前に、自然と傘を閉じた参賀者たち(撮影/写真映像部・松永卓也)

 なぜ、みなが傘を閉じたのだろう。私が思ったのは「SS席だからだろうか」ということだった。有り体に書くなら、せっかく近くなのだから傘などに遮られることなく見たい。お互いのそういう気持ちがまとまった、そんな感じかと思ったのだ。

 だが、SS席だけではなかった。お出ましが近づき、参賀者の傘が閉じられた様子をフジテレビ皇室担当解説委員の橋本寿史さんがFNNプライムオンラインに書いていた。東庭後方から撮った写真もあり、見ると確かにほとんどの傘が閉じられている。2回目も3回目も同様だったそうだ。

女性皇族方が笑顔でうれしそう

 10時20分過ぎに陛下が姿を表す。雅子さま秋篠宮さま紀子さま愛子さま佳子さまが続く。「愛子さまー」などと叫ぶ人々が多数いるかと予測していたが、ほぼいない。静かな中で陛下がお一人で手を振る。ややあって、雅子さま、それから秋篠宮さま……と続く。

 陛下の言葉の前後のお手振りが意外と長く、SS席からいろいろなことが見えた。雅子さまと愛子さまは何か話しているなー、とか、佳子さまは好奇心たっぷりな表情だなー、とか。そして何よりうれしかったのが、雅子さまをはじめとした女性皇族方が笑顔でうれしそうだったということだ。

 話がずいぶんさかのぼるが、令和になる前と後、2度にわたって精神科医の斎藤環さんにインタビューした。斎藤さんは平成の時代、雅子さまの適応障害について「実存のうつ」、つまり皇室の中で生きる意味を見失ってしまったのではと見立てていた。令和前、斎藤さんは「実存は中身であり、地位では埋められない」と語っていた。が、令和になり、雅子さまは体調が好転したようだった。トランプ大統領の来日で自信を得て、人前に立つことに意味があると感じられるようになったのではないか、と斎藤さんは言っていた。

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被災者を励ます存在で、いるだけで価値がある