間違えたくない、うまくいくかわからないくらいなら最初からやりたくない……。子どもが失敗を恐れる背景には、どんなことがあるのでしょうか。これまで6000組以上の親子の話を聞いてきた教育家で、見守る子育て研究所所長の小川大介さんに聞きました。(聞き手/AERA with Kids+編集長 鈴木顕)
【マンガ】かんしゃくを起こす5歳児 勝ち負けへの強いこだわりが「負けても大丈夫」に変わった魔法の言葉とは失敗できる機会が減っている
――先日<自分が間違えると激しく怒ってしまう子にどう対応したらいいか>という悩みに答えていただきましたが、編集部に寄せられる親御さんからの悩みに、「子どもが失敗を恐れる」といったものが増えてきたように感じます。
要因はいろいろありますが、一つは失敗する機会が減っているのではないでしょうか。現代は晩婚化もあり、年齢の高い親御さんが増えました。親の経験が少ないと子育ても手探りで、子ども自身も自然と試行錯誤しますが、人生経験豊富な親御さんは問題解決力が高く、気になることを先回りして解決できてしまうので、子どもが失敗する機会が少ないまま成長していきます。そういったなかで小学校受験や習い事が始まり、できないことに直面してうろたえてしまうのかもしれません。
また、少子化で他の子と触れ合う機会が減って、他の子が何をするか、何を言うかわからない状況の中でさまざまな経験をする機会も少なくなっている。公園ではジャングルジムやグルグル回る遊具が次々と撤去されていき、一人や大勢で創意工夫をする遊びが減って、遊び方が定まってしまう。不確定で突発的なことへの経験が確実に減っているんです。
――混乱したり、困ったりすることが減っていると。
うまくいく体験はたくさんしているし、昔の子どもよりも物事をよく知っていると思います。その半面、思い通りにならないことが当たり前ではなくなっているので、反発したり怖がったりが起きやすくて、それがかんしゃくという行為に現れているんです。
親だって寝坊してもいい
――親自身も失敗したくない人が増えているんでしょうか。
僕は日ごろから「失敗したくない」という悩みが生まれる背景に、社会的要因を感じることがあります。一つは、将来への不安。昔は真面目にやっていれば幸せに暮らせたけれど、今はこの先どうなるかわからないという不安がありますよね。だから親御さんは、子どもにできることはしてあげたいし、間違いのないレールを歩かせたいという思いが強くなる。
次のページへ親も失敗したくない人が増えている原因は?