東京都港区の全区立中学校で今年度から、6月から9月にかけて3泊5日の海外修学旅行が実施されています。行き先はシンガポール。円安でやむを得ず中高生の海外修学旅行の行き先を国内に変更したり、旅程を短くしたりする学校も多いなか、公立中で海外への修学旅行を実施するのは全国でも珍しいといいます。背景について、港区の教育長に聞きました。

MENU 3泊5日で一人34万円 海外修学旅行のねらいは 97%の保護者に充実感 来年以降も継続の方針 「教育機会の不平等」と区外からは批判の声も

3泊5日で一人34万円 海外修学旅行のねらいは

 修学旅行は、学習指導要領で「特別活動」の一つとされ、ほかの授業と同じように全員参加が原則だ。海外修学旅行の対象となるのは、港区内の特別支援学級を含む全10の区立中学校の3年生計760人。公益財団法人日本修学旅行協会によれば、費用が高額になることから、全ての公立中学で海外修学旅行を実施する自治体は都内初、全国でも珍しいという。

 3泊5日の一人あたりにかかる費用は約34万円にのぼる。このうち家庭の負担額は一律5万円(ほかにパスポート代など1万7千円)で、超えた分を区がまかなう。修学旅行にかかる最終的な区の支出は、旅行前後の学習や、引率の先生の費用も含めて、約3億8千万円になる見込みだ。

 港区の浦田幹男教育長は、海外修学旅行のねらいについてこう語る。

「港区はこれまで小学1年生から英語活動を行ったり、2007年からは小学生40人・中学生40人をオーストラリアへ派遣したりと、国際理解教育に力を入れてきました。全員が行ける修学旅行は、その教育の集大成の場です」

 港区には約80カ国の駐日大使館があり、人口26万7616人のうち外国人は2万2210人、比率では8.2%(全国平均は2.5%)を占める。英語力や国際教育を求める家庭も多いという。今年度からは、区立幼稚園へのネイティブ教員の派遣も始まっている。

 なぜ行き先にシンガポールを選んだのか。浦田教育長は、「3泊5日で行ける距離」「公用語が英語」「治安と医療体制の安定」「水資源のリサイクル政策が進むなど学習素材に恵まれていること」を理由に挙げた。

「シンガポールは人口600万人の小さな国ですが、一人あたりGDPは8万4000ドルと日本の倍近い豊かさです。中華系、マレー系、インド系と多民族が共生して発展する社会を肌で感じてきてほしい。日本も外国人人材と協働するのが当たり前になる時代がきますから」

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曽根牧子
編集者/ライター 曽根牧子

朝日新聞出版アエラムックチームの編集・ライター。『AERA English』『英語に強くなる小学校選び』などで教育、英語学習、小学校受験に関する記事を執筆。

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