もう一つは、親が余裕を持ちにくい社会になっているということです。ちょっと脱線しますが、先日、妻から予想外のことを言われたんです。妻は夕方から寝て早朝というか深夜に起きて活動開始するという体のバイオリズムを持っていて、わが家は夕食の時間が別々になることが通常なんですね。僕は夜遅くまで活動していることが多いので。でもそれは、妻の体質ですからそういうものだと思っていました。ところが、妻は「普通はこういうスタイルを受け入れてくれないと思う、だからありがとう」と。妻は世間で「普通」といわれるものから外れることに対してどこか負い目を感じて、感謝の念を持っていたようなんです。
普通であることを求める人にあふれていて、そうじゃない人は責められたり負い目を感じたり。ちょっとしたズレを「そんなもんだよね」と受け入れるだけで感謝されてしまうこの社会って、やばいなと思ったんですよ。今の親御さんたち、特に女性は、社会の中で「普通の母」「普通の妻」から外れることに対して、常にプレッシャーを感じさせられているのではないかと。
――なぜ普通から外れてはいけないと思ってしまうのでしょうか?
情報があふれすぎているんでしょうね。正解のモデルケースがたくさんあって、そこから外れることに痛みを感じやすい。そういった社会の息苦しさと未来への不安が相まって、「失敗させてはいけない」という「親のがんじがらめ感」が、子どもにもうつってしまっているんではないかと。でも、親が寝坊してもいいし、弁当の用意を忘れてもいいですよね。失敗をみんなで許容していくことが、「失敗したくない」という問題を解決することにもつながっていきます。
「ないものをどうしよう?」から工夫が生まれるし、定まった方法は面倒くさいとショートカットするから裏技が見つかる、イノベーションが生まれるんです。きっちりすることが素晴らしいという「思い込み」から外れていきましょう。
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