ディラン 大谷はユーモアのセンスがあると思う。彼の会見は、まずは現地メディアによる英語での質問に答えてから、日本メディアからの日本語での質問に移る。僕は日本メディアの会見にも残ってやりとりを聞くんだけど、質問内容が違って面白いんだ。
日本の記者は技術的なことを細かく聞く。たとえば、「いつもより手の位置が3センチくらい下がっているように見えましたけど」とか。そういう質問が5、6個続いた後に、ちょっと変わった質問をするようにしているんだ。彼がどう反応するかを見たいから。
カブスがアナハイムに遠征に来た時に、鈴木誠也が「野球を教えてって言っても全然教えてくれない。ケチ谷って呼んでいます」と言っていたから、大谷に「鈴木選手がケチ谷って呼んでましたけど」と言うと、笑いながら「人に教えられるほど、良いバッティングはできていない」みたいなことを答えた。でも、表情とか声のトーンから、ユーモアを理解しているなと感じた。通訳の一平をいじるのも好き。一平が兜を被った時に、似合ってないみたいなことを言ったり。時々、そういうお茶目な面を見せる。
笑った表情が良いというのもポジティブな印象を与えていると思う。それにすごく礼儀正しい。攻撃的になることもない。オールスターゲームの時に、多くの記者が、シーズン後にフリーエージェントになることについて聞いていた。僕もそれに関して直球でその質問を投げかけてみた。その時は聞こえなかったんだけど、あとで音声レコーダーを聞いてみたら、「何なんだ今の質問は?」と呟いているのが記録されていたよ。彼をイラつかせていたことに全く気付かなかった。
日本人選手は、日本メディアと奇妙な関係にあることが多い。彼らは、母国でどう見られているかの方が気になるから。たぶん僕やサムのようなアメリカの記者が英語で何を書いているかは気にしていないと思う。日本語の記事は、日本で友達や家族も読んでいるから、日本の記者とはちょっと緊張した冷たい関係があるんだと思う。日本の記者たちは、試合中のカメラに映し出される大谷の感じが、自分たちへの態度に比べて、いかに温かみがあるかをいつもジョークにしている。