サム 記者への接し方についていえば、彼は軽い挨拶をするような時ですら、タイミングを選んでいると感じる。普段は僕らが存在すらしていないような扱いだから。日本語で「こんにちは」と「さよなら」を学んで、彼が通りかかった時に使ってみたことがある。そしたら振り向いて笑い出したんだ。他の選手には近寄っていって普通に話すことができるけど、大谷はあまりにもちゃんと交流する機会がないから、そうしたわずかな人間同士としての交流にも感動したよ。大谷は選手なんかには普通の人として接するけど、僕らメディアとは、よほどのことがないと交流しようとはしない。
だからこそ彼が接してくれた時は感動した。職業柄、普段から近くにいる野球選手を見て緊張したり特別な気持ちを抱いたりはしない。でも大谷が僕の「さよなら」という日本語を聞いて、「パーフェクト」と言った時は、「よし、彼を感心させたぞ!」と喜んだよ。
大谷は謎めいていて理解するのが難しい。でも、彼の些細なやりとりを見ていると見えてくることもある。ルーカス・ジオリートがエンゼルスに移籍した時に、二人とも同じくらいの身長で、大谷がジオリートの身長を当てようとしているのを見た。確かジオリートが少し高かったのかな。
セントルイスでラース・ヌートバーに聞いた話なんだけど、彼が大谷に「ランチを食べに行かないか」とテキストメッセージを送ったら、大谷は「寝ている」と答えたんだって。可笑しかったよ。だって、テキストメッセージに返信したってことは、起きているんだから。
大谷は遠征中は外出はしないみたい。バスでホテルと球場を行き来するだけ。人目につきたくないんだろうね。たとえ一緒にWBCを戦った仲間とのランチでさえ。野球界の数少ないスーパースターの一人だから仕方ない。その後、大谷とヌートバーは結局、どこかで会ったとは聞いたけど。