兵庫県川西市の中川直子さんは同市立北陵小学校のPTA会長だった22年度、近隣校の会長らと相談してPTAを解散した。翌23年度から「ココスクール」という保護者グループを立ち上げ、その際に「登校班改革」も行った。保護者・教員双方の負担が大きかったからだ。

「以前は各班の保護者をとりまとめる『ブロック長』のなり手を見つけるのに毎年会長がとても苦労していました。また役員たちは総出で見守り当番表を作成しており、新学期は学校に通い詰め。年度が替わるたびに気が遠くなるような作業をしていたと聞きます」(中川さん)

LINEで情報共有

 班の編成作業は北陵小では教員が行っていたが、教員からも「負担が大きい」という声があがっていた。地域のことをよく知らない教員が班を編成すると通学が遠回りになる児童が出ていたため、保護者からも改善を求める意見は出ていた。

 17年の個人情報保護法改正後はPTAも法の対象となり、以前のように保護者に無断で学校から各家庭の連絡先を入手することもできなくなった。そのため、集合時間に遅れる子どもがいても家に電話をかけ状況を確認することができず、子どもたちはただ待つことを強いられた。「子どもが一番被害を受けていた」と中川さんは話す。

「この状況をどうしたらいいか考え抜いた結果、班の編成や見守りについては保護者同士で話し合って決めてもらうのが一番安全で安心だと考えました。PTAがなくなった今、保護者一人ひとりが自分で考えて行動する必要もあると思ったので」

 そこで中川さんは各班の保護者同士をつなぐためLINEのオープンチャットを複数作り、希望者が任意で登録できるようにした。すると連絡や情報共有がスムーズに行えるようになり、これまでの課題はほぼ解消した。新しい仕組みに移行して1年経つ今も目立った問題はなく、保護者にも教員にも好評だ。

「ブロック長」の代わりに新設した各班の「連絡係」も、新年度に向けて引き継ぎが進んでいる。

「準備はそれなりに大変だったが、その後はすごく楽になったので変えてよかった」と中川さんは笑顔を見せる。(ライター・大塚玲子)

AERA 2024年4月15日号 より抜粋