「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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今年の春闘では各社の賃上げ回答が相次いで行われたことが大きく報道されました。多くの企業で、連合が掲げた賃上げ率の要求方針「5%以上」超え。5%を超えるのは33年ぶりとのことです。
ローソンでも、組合員平均の月例賃金を5%アップすると発表し、2年連続の賃上げとなりました。
デフレが続いた「空白の30年」が終わりを告げ、いよいよ経済と生活が両輪で回りながら成長を遂げていく時代の、今年はスタートになる。私たちローソングループも社会の一員として、自分たちの賃上げ交渉にもしっかりと対応し、「賃金がまず上がり、あとからものの値段がついてくる」という好循環、納得感のある分配をきちんとやるべきだと考えた結果です。
しかし、本当に大事なのはこれからです。賃上げをすることは簡単ではないけれど、やろうと思えばできる。ただこの賃上げが本当に「持続可能な賃上げ」となるかが、各企業にいま、求められているところだと思います。いかに生産性を上げつつ、社員全員と加盟店さん、クルーさんが働きがいをもって働ける環境を作っていくか。まさに「構想段階が終わり、これから実行フェーズ」と認識しています。
そのためにも、変わるべきところは変わらないといけない。実は日本の「リアルサービス業」は非常に生産性が低いんです。私たちはテクノロジーによって圧倒的に生産性を上げる「リアルテックコンビニエンス」を目指すことで、収益を今まで以上にあげ、それをしっかりと社会や働く仲間に還元したい。
テック化することで「テックカンパニー」と言われるくらいの企業になること。そして「GAFA」の一角に食い込み、ローソンのLを加えた「GAFAL(ガーファル)」と呼ばれること。それを目標に掲げ、これからも持続可能な成長を目指していきます。
◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2024年4月15日号