映画の劇中には、こんなシーンがあります。

 ドクが「デロリアン」を動かすため、ごみ箱のなかからバナナの皮や飲み残したビールを漁り、「デロリアン」に放り込む。すると、それを燃料にして「デロリアン」が走り出し、過去へ未来へ旅立っていく……。

 30年前、私がまだ学生だった21歳のとき、映画館でこのシーンを見て、私は衝撃的なまでの感動を受けました。

「すごい!30年後の未来は、ごみでクルマが動くようになっているんだ!」

 その感動が、今日の私をつくる原動力になり、この日のイベントを企画したそもそものきっかけとなっています。

 実は、この日のイベントで「デロリアン」を走らせた燃料も、私たちが消費者から集めた衣料品をリサイクルしてつくったバイオエタノールです。

 日本の法律では、バイオエタノールだけでクルマを走らせることが認められていないため、実際には、ガソリンにバイオエタノールを混ぜたものを燃料として使いましたが、このとき使ったエタノールは、紛れもなくごみからつくったものです。

「あなたの古着を集めて、みんなでデロリアンを動かそう」と消費者に呼びかけ、イベントのためにこの2ヵ月ほどで回収した古着はおよそ20トン。事前の想像を大きく上回り、バイオエタノールにして1万リットルにもなる量でした。

 私自身の夢の実現のために始めたことが、多くの人たちの共感を得ることができた。私ひとりの夢だと思っていたら、実はみなさんも同じように思い描いていた夢だった。消費者参加型のしくみで古着を集めたことで、その夢の広がりを実感でき、この2ヵ月のあいだ、毎日夜も寝られなくなるほど興奮しました。

●「デロリアンを日本の技術で走らせる!」――42歳で一念発起、独立へ

 この日のイベントの正式名称は、「FUKU-FUKU×BTTF?GO! デロリアン走行プロジェクト」です。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー(BTTF)』と当社のリサイクルブランド「FUKU-FUKU」のダブルネームを冠し、映画を製作したアメリカのNBCユニバーサル社の公認を取り付けたイベントは、多くの消費者に支えられ、多くのファンに見守られて、大盛況のもとに終えることができました。

 この日の喜びを糧にして、これからも、消費者参加型のしくみでリサイクル社会の実現を目指していく。それが、私の次の夢となりました。

 こうして30年をかけて映画の技術を実現したわけですが、実を言うと映画を観た当初、「デロリアン」を走らせる夢の技術は、世の中の誰かが実現してくれるものと思っていました。21世紀にもなれば、「ごみ」が「資源」として当たり前のように使われる未来が訪れるものだと思っていたのです。

 ところが、映画を観てから10年経ち、20年経っても、そういう技術が実用化されたというニュースは聞こえてきません。

「このままでは、「デロリアン」が見せてくれた夢は、夢のままで終わってしまう……」

 そのことに焦りを感じた私は、「2015年10月21日16時29分」までに、ごみからつくった燃料で「デロリアン」を走らせることを目標に、2007年1月に会社を立ち上げました。

 この時点で、残りは8年。人生を賭けた勝負が始まったのです。

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