健一:それはしょうがない(笑)。僕も幼い頃からとにかく映画が好きで。それは、父親の影響なんだよね。小さい頃から父親のベッドに入り、一緒にテレビで放映していた映画を毎日のように観ていて。映画館に行くのも好きだったけれど、映画の話なんて同世代にはできない。だから、15歳でこの世界に入り、大人たちに囲まれるようになり、本当に楽しかった。自分が好きな作品をみんな知っていたし、「それが好きなら、この作品を観た方がいいよ」って年上の人たちから教えてもらってきたから。だから、自分も同じようなことをずっとしていたのかな。幼い頃は、圭人も反発していた時期もあったけれど。

圭人:ピエールとニコラにも重なるけれど、言われれば言われるほど「はい、はい」と投げやりになっていたね。

健一:本人に興味がない限りは、言っても響かない。4歳の頃にギターを渡しても、その頃は興味を持たず、15歳頃にやっと興味を持ち始め「遅いよ!」と思ったり。でも、そういうものなんだろうな。思春期には「反抗したら、俺も必死に反抗するよ」と言ったこともあったね。

圭人:怖い、怖い(笑)。舞台をやっていて改めていいな、と思うこともあって。たとえば、過去の自分の気持ちを演じる人物にのせ、言葉として伝えることができたとき。生きていくなかで経験した「悲しい、苦しい」といった思いも舞台の上では出していける。日常で経験してきたことが、演技に役立ったりもする。そんなときは、人生が肯定された気持ちになるんです。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2024年4月8日号

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