AERA 2024年3月25日号より

「遠回り」こそ近道

――スカウトがきっかけで中学から俳優の仕事を始めた。最初は「何が正解かわからなくてすごく苦労した」という。

三山:他者と交ざってお芝居をする経験を重ねる中で、だんだんと楽しさを感じるようになりました。「虎に翼」もそうですが、トップラインで活躍する役者さんたちだからこそ生まれる空気感を味わえるのがこの仕事の醍醐味。その空気感を逃さずに自分が乗っかることもありますし、僕が出した空気感に相手が乗っかってくれることもある。その一瞬のやりとりからドラマが生まれます。

――俳優として他者と交ざることで生まれる空気感は、BE:FIRSTとしてメンバー間で生み出す空気感と違いはあるのだろうか。

三山:芝居の空気感とアーティストの空気感は違いますが、両方とも「自分である意味」が必要だと思っています。この社会で好きに生きたいという願望を何のフィルターも通さずに出すと、人とうまくやっていけない。自分のエゴを誤解されないように相手とうまくすり合わせていく必要があります。相手の願望を受け入れながら、自分の願望を理解してもらうようなコミュニケーションを取っていく。そのやり方は一見遠回りに思えるかもしれないけど、その最中に経験を積んで、自分の考えも変わる中でやりたいことに辿り着く。結果的に近道だと思っています。僕にとっては、その遠回りが自分として生きる意味です。

 自分の資質と向き合った時に出てくるのが繊細さなのか大胆さなのか。自分と深く向き合って遠回りをすることで、自分がその役を演じる意味が生まれていきます。

(ライター・小松香里)

AERA 2024年3月25日号より抜粋

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