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 ソウル出身のノラ(グレタ・リー)は12歳でカナダへ移住した。12年後、彼女はFacebookで初恋の相手ヘソン(ユ・テオ)と繋がる。彼はノラを想い続けていた。それから12年。ニューヨークで夫アーサー(ジョン・マガロ)と暮らすノラはヘソンと対面する──。米アカデミー賞作品賞にもノミネートされた「パスト ライブス/再会」。俳優のユ・テオさんに本作の見どころを聞いた。

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 本作は12歳で韓国からカナダに移住したセリーヌ・ソン監督の体験をベースにしています。ノラ役のグレタ・リーも私も欧米に生まれ韓国にルーツを持っています。私たちは自分のアイデンティティーを探すときに生じる葛藤やカオスについて通じ合い、互いを信頼し、この物語を正しく伝えたい思いを共有することができました。

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 私が演じたヘソンは韓国に生まれ、そこで生きている青年です。私と置かれた状況は違いますが、環境を変えたいと願っても自分ではどうしようもできないことや、ときにそれを受け入れなければならない点に共通点があると感じ、そこから生まれる寂しさやアウトサイダー感、メランコリックな感情を表現するように心がけました。

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 ヘソンとノラ、ノラの夫アーサーの三人は単純な三角関係にはなりません。アーサー役のジョン・マガロと「この映画には女性から見た新しいタイプのマスキュリニティー(男性性)が描かれている」と話し合いました。現実社会でもここ5、6年でステレオタイプな男性性は劇的に変化したと感じます。いまは男性らしくあるべき時は男らしく、同時に必要なときは自身の繊細さやもろさを見せることも厭わず相手に共感し、コミュニケーションを取ることができる、その両面を持つことが「成熟した大人の男性」で、そうした表現も本作の重要なポイントでした。

ユ・テオ(俳優)Teo Yoo/1981年、ドイツ・ケルン出身。ニューヨークとロンドンで演技を学び、米独でキャリアを重ねる。2009年からソウルに拠点を移し「別れる決心」(22年)などに出演。4月5日から全国公開(c)Gareth Cattermole/BAFTA/Getty Images

 私は2008年に妻と韓国で暮らすことを決めました。自分のアイデンティティーや国に対する好奇心を探求したかったこと、韓国のエンターテインメント業界に西洋より大きなチャンスを感じたことが理由です。韓国には他では経験したことがないほど野心的で新しいアイデアを取り入れる文化があり、私にとって大きなインスピレーションのもとになっています。

(取材/文・中村千晶)

AERA 2024年4月1日号