自浄作用は期待できない
ところが、20年ほど前にデジタル一眼レフが普及し始めると、撮影方法は一変した。
「細かく露出を変えながら、とんでもない枚数を撮影できるようになった。しかも、いくら撮影してもお金がかからない。なので、デジタルカメラが普及したことで、撮り鉄のすそ野はものすごく広がった。今ではどんな鉄道イベントに行っても、カメラを持った人が大勢います」
昔から迷惑行為をする鉄道ファンが一定の割合で存在していたとすれば、鉄道写真の人気の高まりと、SNSの利用者の増加によって、迷惑行為をする人が目立ってきた、と考えるのが自然だという。
特急「やくも」での迷惑行為のXへの投稿は炎上後、削除された。そこには、「悪いことをしてしまった」という意識が感じられるという。
一方、世間からいくら批判を受けても撮り鉄の迷惑行為について、「自浄作用は期待できない」と、小林さんは見る。それだけ、「いいね」をめぐる内輪の競争意識は強いということだ。
「それに対して、警備を強化する必要性が高まるので、鉄道会社は大変だと思います。一部の鉄道会社は迷惑行為を軽減するために、有料で写真撮影の場を設けたところもあります」
外食産業などで自らの迷惑行為を撮影して注目を浴びたい人が繰り返し現れるように、この問題は撮り鉄に限ったことではないという。
「大多数の撮り鉄は社会のルールを守って撮影しています。ただ、たまに暴走する人が出てくる。残念ながら、この状況は変わらないと思います」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)