特急「やくも」の連結部分の上でガッツポーズをとる男。肩には大きなレンズを装着したカメラがかかっている(Xに投稿された画像を一部加工しています)

鉄道人気の異様な高まり

 一般の人には理解しがたい行為だが、小林さんは「これは『鉄道系』というより、迷惑なことをして注目を浴びようとする『迷惑系』のYouTuberに近いでしょう」と分析する。

 例えば昨年、回転ずしチェーン大手「スシロー」の店内で、客がしょうゆさしをなめるなどの迷惑行為をした動画を撮影し、SNS上に拡散した。それと同様な行為だという。

「今回の特急『やくも』の件に関しては、純粋に鉄道を愛してるというよりも、SNSの『いいね』稼ぎの魅力に取りつかれてしまい、承認欲求がエスカレートして暴走してしまった。そんなところだと思います」

「注目されたい」というゆがんだ承認欲求から、迷惑行為に及ぶ鉄道ファンは「昔から一定の割合でいた」と小林さんは感じている。ただ、ごく少数だったこともあり、あまり目立つ存在ではなかった。

 ところが近年、それが表面化してきた。背景には、カメラの進化による撮り鉄の増加と、SNSの普及があるという。

「最近、趣味としての鉄道の人気は異様なほど高くなっています」(小林さん)

 珍しい車両や引退前の列車が走るなど、鉄道のイベントがあると、それがどこであっても、あらゆる年齢層のファンが押し寄せるという。

「みんなバンバン写真を撮って、SNSに投稿しています。動画をYouTubeにアップしている人もいます。SNSに写真を上げて注目を浴びたい人が劇的に増えている」

 ちなみに、今回話題になった特急「やくも」は貴重な国鉄時代からの電車で、来月から6月にかけて引退が予定されている。懐かしの『国鉄色』のほか、数種類の塗装が施され、ファンの注目の的だという。

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カメラの進化とSNSの発達