開幕戦のベンチに入り、戦況を見守る水原氏(左)。翌日の第2戦も、先発する山本由伸投手の通訳としてベンチにいるはずだった=2024年3月20日、韓国・ソウルの高尺スカイドーム(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 MLBソウルシリーズ最中の日本時間3月21日朝、長年にわたり大谷翔平選手の通訳を務めてきた水原一平氏の解雇を複数の米メディアが報じた。AERA 2024年4月1日号より。

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 大谷翔平選手の通訳・水原一平氏の突然の解雇報道。米ロサンゼルス・タイムズ紙は現地時間20日、大谷選手の代理人弁護士が、水原氏が違法賭博のために大谷選手の資金の窃盗に関わっていたとの声明を出したと報じた。米スポーツ専門局ESPNによれば、大谷選手の銀行口座から少なくとも450万ドル(約6億8千万円)が賭博の胴元の知人の口座に送金されていたという。

オンライン賭博が普及

 在米ジャーナリストの志村朋哉さんはこう話す。

「地元の新聞やテレビはもちろんトップニュースで、全米の報道サイトでもかなり大きく報じられ、スポーツの枠を超えたニュースとして扱われています。米プロスポーツ史上最高額の7億ドルで契約したスーパースターをめぐる醜聞であること、そしてスポーツ賭博は米スポーツ界ではタブー的な話題であり、厳しく処罰される問題であるという前提があるからでしょう」

 スポーツ賭博は州によって法律が異なる。2018年に連邦最高裁がスポーツ賭博を規制する連邦法に違憲の判断を下したことで各州に判断が委ねられ、合法化が一気に進んだ。カリフォルニア州では違法だが、50州のうち37州と首都ワシントンでは合法で、オンライン賭博サービスの普及も相まってスポーツ賭博は急速に広まった。

「オンライン賭博が普及してから米国ではスポーツギャンブルは一般的です。賭博に対する印象は日本とは違い、白い目で見られることもありません。スマホなどから気軽に手が出せて、テレビやネットなどでも大々的に宣伝されています」(志村さん)

ギャンブル依存と告白

 水原氏は球場や練習場への送迎、時には練習相手も担うなど常に大谷選手のそばにおり、通訳を超えた存在として知られた。Jリーグの複数クラブで通訳を務め、WBCでは韓国代表の通訳も担当するなど、韓国語通訳歴が25年を超える高橋建登さんは自身の経験をもとにこう言う。

「通常、クラブに雇われている通訳がプライベートも常に一緒にいるということはあまりありません。プライベートに積極的に関わろうとはせず、まずは一定の距離感を保つのが基本です」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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