仕事を始めるならテクノロジー系企業を勧めるという。
「テクノロジー系の株式はほとんど下がっていません。リスキリングをし、いま好調な半導体関連、資本生産性の高い企業で仕事を始めるといいと思います」
資本生産性の低い企業で待っているだけでは未来はないのか。
「実質賃金の上昇は構造的には厳しいです」
資材の高騰に伴い、企業は商品の価格を上げているが、物価の上昇に実質賃金が追い付いていない。
「会社側が故意に賃金を抑えているというわけではなく、単純に市場価値に見合った賃金しか払えていないのだと思います」
さらに勝間さんは言う。
「なぜ賃金が上がらないのかという構造を考えて、そこから抜け出すしかないんです」
労働者への投資も
ただ、政治の出番もある。
「経済成長の再分配をどう行うかは政治の役割です。累進課税制度を使うのが一番早い再分配です。金融収入の税率は2割ですが、他の所得と合算して課税される総合課税を使えば、累進課税に近くなります」
しかし現実は、逆方向に向かっているという。
「新NISAも始まり、積み立てができるような富める人がどんどん富む方向に舵を切っています」
「『株価が足元の経済状況を反映していない』といいますが、『反映する』という感覚が間違いです。株価はあくまで日経平均に採用されている会社の将来キャッシュフローを割り引いた金額です。その金額が、そのまま賃金になるかわかりません。株主に還元するか、どこかに再投資するかもしれません。ただ、AIテクノロジーの時代。労働者への投資が選択的になっているのは確かです」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年3月25日号