車いすテニスの国枝慎吾さん(右)と柳井正ファーストリテイリング会長兼社長=2023年2月、東京都(写真:REX/アフロ)

 日経平均株価は3月4日、史上初の4万円の大台に乗った。株価は上がったが、実際の経済はどうなるのか。わたしたちの暮らしへの影響は──。経済評論家・勝間和代さんに聞いた。AERA 2024年3月25日号より。

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 株高が生活実感に直結しないのはなぜか。勝間和代さんはこう言う。

「資産運用でお金が増えるスピードは労働によってお金を得るよりも速いため資本家に富が集中しやすい。つまり労働というカードしか持っていない市民はますます経済成長の恩恵を受けられません。それどころか、物価や様々な資産価値が上がってむしろマイナスの目に遭う、ということです」

 そして、今の株高の要因になっているインフレや円安が、格差拡大に拍車をかけている。

「デフレの時代は誰も投資しませんが、インフレの時代は利益が回収できるのでどんどん投資します。結果として格差が広がる方向に動きます。円安やインフレがあると、その傾向は特に加速するのです」

 では、市民が恩恵を受ける方法はないのだろうか。

「資本生産性の側に回るしかありません」

 そのための手段は二つ。

 一つは、実際に金融資産や不動産資産などに投資をすること。もう一つは、資本生産性が高い労働市場で働く、もしくは起業することだ。

「GAFAがなぜあんなに儲かって給料が高いかというと、わずかな人数で大きな利益を上げる、つまり基本的に資本生産性が高いからです」

 対して資本生産性が低いのは、例えばサービス業だ。労働集約型で利益が少なくなりやすい。ただ、資本生産性の低い業界でもロボットを使うなどして効率化し、生産性を上げることができる。その一例に、勝間さんはユニクロを展開するファーストリテイリングを挙げた。

「昭和の洋服は値段が高かったですが、生産性の高いユニクロが登場して洋服の価格が変わりました。倒産するアパレル企業があるなか、ファーストリテイリングの株価は上がっています」

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