2000年代に入っても暗雲は晴れず、政府は03年5月、りそな銀行に公的資金注入を決定した。国内の金融危機のほか、08年には米国の大手証券リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけとしたリーマン・ショックが起きた。影響は日本にも及び、非正規労働者の人たちを直撃。同年末には職も住まいも失った人々に食事などを提供する「年越し派遣村」が東京・日比谷公園で運営された。
株価はさらに下落傾向をたどり、09年3月にはバブル崩壊後の最安値となる7054円にまで落ち込んだ。
自民党の政権復帰にともない、12年には経済政策「アベノミクス」を掲げた第2次安倍政権が発足。デフレ脱却を目指した大胆な金融政策など「3本の矢」を柱に、当時の安倍晋三首相は13年に米ニューヨーク証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス」とアピール。黒田東彦総裁(当時)が率いる日本銀行は大規模な財政拡大・金融緩和に乗り出した。
今、株高の一方で、多くの人が異常ともいえる物価高騰にあえぐ。物価高を補える水準の賃上げができている企業は、まだ一部だ。
東京都内のクリニックで働く30代の女性は言う。
「生まれてこのかたずっと不景気だって言われ続けて、いまさら株高だと言われても、『本当に?』としか思えない。大企業は賃上げムードかもしれないですけど私には関係ないですね」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年3月25日号