感情移入できるキャラに
「ドラゴンクエスト」開発当初、ゲームデザイナーで「ドラクエ」生みの親といわれる堀井雄二さんが原案として描いたスライムのラフは、「ウィザードリィ」スライムの影響を大きく受けたものだった。
鳥山さんはそのデザインを一新し、かわいらしく感情移入できるキャラクターとして描き、魂を吹き込んだ。
ゲーム史におけるモンスターデザインは「鳥山以前」、「鳥山以後」と二分しても過言ではないだろう。96年から続く「ポケットモンスター(ポケモン)」シリーズも、鳥山スライムなしには生まれなかったかもしれない。
さらに鳥山さんは、「ドラクエ」以外にも、1995年発売で200万本以上の大ヒットとなった「クロノ・トリガー」、96年の「トバルNo.1」や97年の「トバル2」、2006年の「ブルードラゴン」のキャラクターデザインも担当している。
鳥山さんの描く人物は、躍動感ある描写や印象に残るデフォルメなど、一目見て鳥山さんの絵だとわかる。だが、人間ではないモンスターを生き生きと描く能力もまた、抜きんでていた。
社会現象化したバトルえんぴつ
鳥山さんが生み出したモンスターたちは、新しいヒット商品も生み出した。たとえば、社会現象にまでなったのが、「バトルえんぴつ」だ。
バトルえんぴつとは六角形の鉛筆で、上部にモンスターが描かれ、六角形の横の面に文字が横書きで書いてあり、転がして鉛筆のモンスター同士を戦わせるというものだ。
HBの鉛筆としても使えるため、学校内に“合法的”に持ち込める遊びアイテムとして、90年代半ばに小学生を中心に爆発的なヒットとなった。筆者も休み時間に熱中した一人だ。