かつては当たり前にあった「卒業文集」はなくなってしまうのか。写真はイメージ(PIXTA)

 3月は、別れの季節。そろそろ小学校の卒業式ラッシュが始まる頃だが、最近、6年間の学校生活の集大成である「卒業文集」を廃止する小学校が出てきている。背景には教員の人手不足や業務負担増があるというが、大人になって当時を懐かしむことができる“思い出の記録” を削らざるを得ない教育現場の実態とは。

【図】「なめているのか」。教員たちを困惑させた、裁判所が仕分けた残業内容

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〈本年度より6年生の卒業文集を廃止いたします。文部科学省から示された大幅な授業時間数の見直しによって、卒業文集作成にかかる時数の確保が困難になったためです。卒業アルバムは卒業文集を除いた構成で制作いたします〉

 神戸市立多聞東小学校は昨年11月、学校だよりにこんなお知らせを載せた。

 文部科学省は教員の働き方改革の一環として、全国の小中学校に対し、年間の授業時間数が国の定める標準値を大幅に超えないよう求めている。その要請を受けてカリキュラムを見直した結果、文集制作をやめることで授業時間数を圧縮するという決断に至った。多聞東小以外にも、過去には、札幌市や北九州市などの公立小学校で同様の決断がなされている。

 とはいえ、大半の小学校では1~3月の3学期を通して文集の制作が行われているわけだが、教員の負担はどれほどのものなのか。多聞東小を所管する神戸市教育委員会で学校教育課課長を務める坂田仁さんは、元小学校教諭の経験から、その膨大な業務のフローを明かしてくれた。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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