先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください。(この記事は「AERA dot.」に2023年12月9日に掲載された記事の再配信です。肩書や年齢等は当時のもの)。
【写真】雅子さま「母」のオーラが愛子さまを包み込んだ写真はこちら
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皇后雅子さまが12月9日、60歳の誕生日を迎えた。1993年に皇太子だった天皇陛下と結婚し、2001年に長女の愛子さまが誕生。2003年から長く続いた療養生活のなかでも深い愛情を注ぎ、成年になった愛子さまは父と母を「かけがえのない存在」と語った。愛子さまを包み込むように愛しんだ「母」としての歳月を振り返る。
「初めて私の胸元に連れてこられる生まれたての子供の姿を見て、本当に生まれてきてありがとうという気持ちで一杯になりました」
にっこりと笑って視線を上げた雅子さま。声は震え、目元には涙がにじんでいた。
愛子さまの誕生から4カ月が過ぎた2002年4月2日。皇太子さまと雅子さまは、愛子さまの誕生後初めての記者会見に臨んだ。
「今でも、その光景は、はっきりと……目に焼き付いております」
涙をこらえるように、視線が下に向いた。
「生命の誕生……」
感極まって言葉が途切れ、手で口元を押さえる雅子さま。皇太子さまが雅子さまの背中に手を伸ばし、トントンと2度、優しく押さえた。
その年の10月、愛子さまを連れた雅子さまは、初めて母と娘のふたりだけの私的な外出をした。出かけた先は、東京・銀座の教文館。ご一家と長く交流を持つ影絵作家・藤城清治さんの展示会が開かれていた。
真っ暗な会場の中でオレンジや青、緑、黄、白の光と影が、童話の世界や郷愁を誘う情景を幻想的に浮かび上がらせる。
手を伸ばした愛子さまに、雅子さまが「だめだめ」となだめると、藤城さんは「アクリル板の上だから大丈夫」と優しく笑った。
雅子さまは、「愛子にはいちばん美しいものを見せたい」と話した。
翌年の12月、雅子さまは長期療養に入った。外出も難しかった時期だが、ときおり雅子さまは藤城さんの影絵展に足を運んだ。暗闇の中で幻想的な光を放つ作品を長い時間、ひとりで静かに見つめていることもあったという。