その年のできたてのワインをボージョレ・ヌーヴォーと呼ぶように、小麦の産地・十勝では、その年に収穫されたフレッシュな “新麦” を 「とかち小麦ヌーヴォー」 と呼んでいます。今年は9月23日に十勝の新麦が解禁されますが、この日、帯広市では、「とかち小麦ヌーヴォー 解禁祭り」が開催され、新麦パンの即売会などが行われます。と同時に、全国のパン屋では新麦パンが一斉に販売スタート!! 今年はどんなパンが並ぶのか、パン好きには楽しみなイベントです。

春まき小麦と、秋まき小麦。用途によって使い分け。

小麦は4月に種をまく “春まき” と、9月に種をまく “秋まき” があります。タンパクの含量が多い春まき小麦はパン用に、タンパクの含量が少ない秋まき小麦は主に、うどんなどの麺用に使われます。
北海道の秋まき小麦は、9月の中旬以降に種をまきます。1週間くらいで芽が出て、5~6葉期くらいまで成長させます。そして11月、北海道ではそろそろ雪が降ってきます。12月~3月、小麦の苗は雪の下で春がくるのをジッと待ちます。4月に雪がとけ、6~7月は最も成長する時期です。この時期になると、春まき小麦も大きく成長します。初夏の小麦畑は穂がふくらみ、黄金色に色づき始めるころで、その風景は、美瑛や富良野の写真などでおなじみです。
収穫は7月下旬~8月上旬。その後、乾燥させて、いよいよ製粉です。「とかち小麦ヌーヴォー」では、収穫から約2カ月という最短で、旬の新麦パンが食べられます。
参考サイト:北海道経済部産業振興局食関連産業室 食品産業振興グループ、「製パン適性に優れた期待の星、春まき小麦 “はるきらり”」

小麦を収穫した後の「麦わらロール」。酪農家が牛の寝床に利用する。8月中旬の十勝の風景。
小麦を収穫した後の「麦わらロール」。酪農家が牛の寝床に利用する。8月中旬の十勝の風景。

“新麦” で作ったパンを味わおう !! 「とかち小麦ヌーヴォー」、日本中のパン屋で23日から。

9月23日、全国一斉にヌーヴォー小麦が解禁される日に、十勝では「解禁祭り」が開催されます。このイベントは、7月下旬~8月上旬に収穫される“新麦”を楽しんでもらいたいという思いからスタートしました。「十勝が日本一の小麦産地であること」と、「十勝産の小麦でおいしいパンが作れること」を伝えようと、新麦で作ったパンが配られるほか、パンの即売会も行われます。
また、この日から一斉に全国のベーカリーなどで、新麦パンを販売します。北海道では44店、東日本では75店、東京では70店、西日本では125店が、新麦を使って焼いた「ヌーヴォーパン」を販売、旬な香りと味わいのパンが勢ぞろいします(イベントに参加するお店は、下記の「とかち小麦ヌーヴォー」公式ホームページを参照)。

道産小麦を使った製品も続々!! 餃子の王将、丸亀製麺、白い恋人など、大手が利用。

餃子の王将では2014年10月から、ギョーザの主要食材である豚肉、キャベツ、ニラ、ニンニク、生姜、そして小麦粉をすべて、国産化しました。小麦粉はもちろん北海道産。安心安全につながるとしています。担当者によると、ギョーザのモチモチ感を出すのには道産小麦粉が最適であるそうです。
讃岐うどんの丸亀製麺では、10年前から北海道産の小麦粉を使っています。うどんは小麦粉、水、塩とシンプルな素材を使うので、素材の持つほのかな香りや味わいが目立ちますが、もっちりとしたコシのある麺を目指していたら、北海道産の小麦粉にたどり着いたといいます。
さらに、北海道の代表的なお菓子「白い恋人」の石屋製菓では2012年、「白い恋人」に使われる小麦粉を北海道産に切りかえました。もともと発売当初から品質にはこだわっていましたが、小麦粉を道産にしたことにより、カカオバター以外の原材料はすべて北海道産になりました。
国産小麦の約7割を北海道産が占めています。生産量も毎年50万トン以上を維持していて、大手の食品メーカーなどでの利用が進んでいます。とりわけ2014年度からは、円安などで輸入小麦の価格が上昇したこともあり、1トンあたりの小麦の価格は国産のほうが下回っています。価格も含め、安心安全を求めて、国産の小麦粉にますます注目が集まることでしょう。
小麦も農産物。毎年旬があり、味も微妙に違ってきます。さてさて、今年の国産小麦の味はどうなのでしょう。できたて小麦で作ったパンをぜひとも味わってみたいものです。
参考:北海道新聞5月21日号9面「飲食店・食品メーカーが注目、道産小麦 広がる利用」

収穫は7月下旬から。今年も上々のでき。
収穫は7月下旬から。今年も上々のでき。