放射線治療は、がんの3大療法の一つ。この約20年で急速に進歩し、がんの「根治」のための有力な治療手段になった。そこで週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』では、全国の病院に対して独自に調査をおこなった。病院から得た回答結果をもとに、手術数・治療数の多い病院をランキングにして掲載している。本記事では「食道がん放射線治療」の解説とともに、食道がんに対する放射線治療患者数が多い病院を紹介する。
【病院ランキング】食道がんの放射線治療患者数が多い全国トップ15病院
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Ⅰ~Ⅲ期は手術が優先され、体力や合併疾患などで手術が難しい、あるいは手術を希望しない場合に、抗がん剤と放射線を組みわせた「化学放射線療法」が選択肢となる。しかし手術では食道だけでなく周囲のリンパ節や胃の一部も切除し、残った胃や腸をつり上げて食道を再建する。そのため、食べ物をのみ込みにくい、誤嚥(ごえん)しやすい、十分な量が食べられないなど食生活への影響が避けられない。のどに近い部分にがんがある場合は、咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)も切除し、声を失うこともある。一方、化学放射線療法は、機能を損なうことは少ない。東北大学病院の神宮啓一医師は言う。
「機能への影響は、生活の質に直結する深刻な問題です。最近は特にⅠ期では手術が可能でも化学放射線療法を選ぶ患者さんが増えていますし、外科医が勧めるケースもあります」
抗がん剤の併用で放射線の治療効果を増強
化学放射線療法は、抗がん剤を加えることでがんをたたく力が増強される。近年は照射にIMRTを使うことで病巣にのみ高線量を集める一方で、周囲の臓器にかかる線量をかなり抑えられるようになった。
「Ⅰ期の治療成績は手術とほぼ同等です。Ⅱ期とⅢ期では局所再発率は手術よりやや高くなりますが、再発した場合は手術をおこなうことで5年生存率は変わらなくなります。ただし、近年ではⅡ〜Ⅲ期は手術と術前化学療法を組み合わせることで治療成績の向上が得られ、そちらが標準治療となっています。また、遠隔転移がないⅣa期(がんが食道の周囲の組織に広がって切除できない状態)は、根治目的の化学放射線療法がおこなわれています」(神宮医師、以下同)