高齢の親を持つ身なら、いつ親から「がんになった」という連絡が入ってもおかしくありません。がん患者における高齢者の割合は実に73・8%にのぼります(2016年、全国がん登録データ)。親の状況によっては、病院選びや治療選択に子どものサポートが必要になることもあるでしょう。そのとき子はどんな役割をどんなふうに担えばいいのでしょうか。専門家とともに考えました。本記事は、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』の特集「親ががんになったとき、子にできること」よりお届けします。全3回の1回目です。
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高齢の親にがんがみつかった! 子どもの役割は?
日本対がん協会が運営する「がん相談ホットライン」には、日々さまざまな相談が寄せられています。患者本人からはもちろん、娘や息子からの相談も多いと相談支援室マネジャーの北見知美さんは言います。
「多くは40代や50代なので、インターネットで情報を集めるのに慣れた世代です。どうやって治療法を決めたらいいのか、治療や療養にいくらお金が必要かなど、具体的な相談が多いですね。高齢の親に代わって自分がやらなくては、という責任感の強い人が多く、それが悩みを深めているように感じます」
世代の違いが生む、治療の考え方のズレ
たとえば、治療をどの程度積極的にするかという問題です。
「最近は『治療の副作用で苦しむくらいなら、余命が短くなっても穏やかに暮らせたほうがいいのではないか』と考える子ども世代が増えています。でもそれが親の命を左右する可能性もあるので、『治療したほうがいいのか』『いや、生活の質が大事だ』と、命のかかった選択に葛藤する人は少なくありません」
一方で、親は「もう十分生きたから、つらい治療はしたくない」と思っていても、子どもは「1日でも長く生きてほしい」と積極的な治療を望むケースもあります。「一番大事なのはご本人の気持ちです。親の希望に耳を傾けて」(北見さん)