突然ですが、皆さんの人生はうまくいっていて幸せでしょうか? 正直に言うと私自身、「はい、幸せです!」と前のめりには言えません。嫌なことを考え出すと止まらなくなってしまうし、一時的にストレス解消してもすぐにまた落ち込んでしまう......。けれどこれは、人間なら当たり前のことのようです。なぜなら私たちは生きている以上苦しみが付きもので、人生が絶好調のときでさえ苦しみをゼロにすることはできないから。もしも望んでいたとおりの大金や美貌を手に入れられたとしても、その後ずっとバラ色の人生が待っているかといえば、きっとそんなことはないですよね。
そんな中でも「幸せの仕組み」というものを知れば、幸せな気分を増やすことはできるといいます。そのコツを教えてくれるのが、神経心理学を専門とする臨床心理士のエマ・ヘップバーンが著した『幸せスイッチをオンにする メンタルの取扱説明書』です。エマは「幸せの国」へのフリーパスなどはこの世に存在せず、「努力を重ねながら、自分のためになるもの、本当に幸せをもたらすもの、幸せを増やすために日常生活で実践できる効果的な行動を学んでいくしかない」(同書より)と記しています。幸せとは究極の最終目標ではなく、日々をていねいに暮らす過程で身につけて実践するスキルだというのです。
幸せの仕組みを表す比喩としてエマが同書で紹介しているのが「サンドイッチ」のイラストです。土台となるパンは、食事や睡眠といった生活の基礎に当たるもので、日によって変わることもあれば、ぐらつくこともあります。具は、私たちの幸せにつながる要素を表しているもの。また、サンドイッチをつくるための道具(調理器具)は、幸せをつくるための具体的なコツに当たるそうです。
同書ではそれぞれが空欄になった「私の幸せのサンドイッチ」が描かれていて、幸せの仕組みを学ぶことで自分に合ったサンドイッチを完成させることができます。どんな具を入れるかは人それぞれ。幸せの価値観には「こうあるべき」という決まったものがないことがわかります。また、具のおいしさを味わうには、味にきちんと注目することも大切なようです。
私たちの脳は良い情報よりも悪い情報に注意を向けやすい傾向があります。「脳は良いことと悪いことでは、悪いことの方が人生においてより大きな影響を与えると判断して、ネガティブな感情をより強く覚えておこう」(同書より)とするのだそうです。このように、ただでさえネガティブバイアスがかかりやすいのですから、脳の仕組みを理解して幸せの仕組みを知ることは、人生を心地よく過ごすうえで非常に効果的だと言えます。同書で学べる、人生に幸せ気分を増やすためのスキルは、皆さんにとって代えがたい価値となるかもしれません。
[文・鷺ノ宮やよい]