『秘密の往復書簡』に話を戻すと、テレジアは「妻としてのあり方」についてもしばしば触れている。

 嫁いで最初の手紙では「妻は何ごとにつけても夫に従い、ひたすら夫に気に入られるように、そして夫の意志が成就するように」努力すればよい、と書いている(1770年5月4日)。だが、単純な「夫ファースト」でないところが、テレジアのテレジアたるゆえんだ。

 アントワネットが王妃になって出した2通目の手紙ではこういう表現をしている。

「国王陛下の生涯の友であり、そのもっとも信頼を寄せる相手としてのあなた、また陛下の幸せのみを心に掛けている女性、その全幅の信頼に値する女性としてのあなたに申し上げます」(1774年5月30日)

 次の手紙では、前の手紙で勧めたことをよく考えてくれと書き、こう続けている。「陛下の女友だちにして無二の親友になるよう努める、という件です」(同年6月16日)

 陛下と雅子さまは、パレード中、何度か言葉を交わしているように見えた。あの日に限らず、お二人が目を合わせ言葉を交わしている様子は折々に見られる。

 上皇さま(85)と上皇后美智子さま(85)もよく言葉を交わしていた。だが、陛下と雅子さまが会話をする雰囲気は、上皇さまと美智子さまのそれと少し違う。陛下と雅子さまの雰囲気を表す言葉が見つかっていなかった。

「無二の親友」は、かなり適切な表現ではないだろうか。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2019年11月25日号

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