望月さんはサッカー元日本代表で、引退後は指導者になりJリーグの各クラブやU‐16日本代表でコーチを歴任。2011年には「なでしこジャパン」のコーチとしてW杯を制覇するなど、数多くの実績がある。

 指導者の「学び続ける姿勢」がなぜ大切なのか。

 望月さんによると、サッカーの指導者たちには「学ぶことをやめたら、教えることも辞めなくてはならない」という合言葉のような哲学があるそうだ。サッカー以外の競技の指導者や書物から、また、スポーツとは縁遠そうな立場の人の話から学びを得ることもよくあるという。

「私もかつては選手でしたのでよくわかりますが、選手は指導者の言葉を聞く以上に、指導者の行動をよく見ているんです。選手は向上心の塊ですから、向上することを辞めてしまった指導者には魅力を感じません。栗山さんは、その点でとても魅力的な指導者だと思います」

 サッカー界でも、なでしこジャパンの監督だった佐々木則夫さんは、脳科学者と話をして人間の欲求や人が大切にしていることの本質を学んだり、命がけの荒行を成し遂げた僧侶の言葉に学びを得たりしていたという。

 サッカー日本代表元監督の岡田武史さんは、生物学者の話から、最強の組織づくりのヒントを得た。

 人間の体を形成している細胞は毎日生まれ変わっているが、新しい細胞になっても同じ形を作っている。

「それができるのは、細胞たちが『お前はこれをやれ、お前はあれをやれ』という役割を与えられているからではなく、細胞同士がお互いに折り合いを成している、ということだそうなんです。サッカーに置き換えると、指導者が選手に役割を命ずるのではなく、選手同士がお互いの能力や役割をしっかり理解することで、結果、それぞれの役目が作られていく。それが最強のチームなんだと、岡田さんは生物学者の話から学んだのです」

 望月さんも、「孫氏の兵法」の解説書などからヒントを得た経験はあるが、栗山さんの読書量には驚く。古典や先人の言葉からの学びを、とことん突き詰めた指導者ではないかと、望月さんは分析する。

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選
次のページ
「ノート」に秘められた大きな役割