脳動脈瘤の治療は、瘤に血液が流れ込まないようにして、破裂を防ぐことを目的とします。破裂してくも膜下出血を起こし、救急搬送された場合も同様です。くも膜下出血を起こすと再破裂を起こしやすく、再破裂が起きた場合には死に至る危険性が高まるため、再破裂を防ぐ目的で治療するのです。
治療には頭蓋骨の一部を切って、脳動脈瘤の根元をチタン製クリップではさむ「開頭手術」と足の付け根にある動脈からカテーテルを挿入して瘤への血流を止める「脳血管内治療」があります。脳血管内治療は、従来の細い針金状の金属(コイル)を瘤の中に詰める方法のほか、細かいメッシュ状のステント(筒状の金網)を瘤の根元に留置する方法などが登場し、治療の幅が広がっています。ただし、脳血管内治療は開頭手術に比べると再発率が高く、約1割の人は再治療が必要になります。
「部位や形状、サイズによって向き不向きがあるので、脳動脈瘤の症例ごとにどちらの治療が適しているのかを検討します。年齢も判断基準となり、高齢者の場合は、からだへの負担を考えて、脳血管内治療が可能かどうかをまず検討し、若い世代の人は、根治性をとって開頭手術を優先的に選択することもあります」(水谷医師)
また、開頭手術は術後にてんかん発作を起こすリスクがあるため、ドライバーなど職業によっては避けるケースもあります。
未破裂の脳動脈瘤を治療するかどうか、治療する場合は開頭手術か脳血管内治療か、迷う人も多いそうです。
「当院には迷った患者さんがセカンドオピニオンに来ることがありますが、詳しい説明を受けていないことが多いように感じます。脳動脈瘤のサイズや形状、部位、そこからの破裂リスクなどをできるだけ正確に知ることが大事です。それでも迷った場合はセカンドオピニオンを聞くことをおすすめします」
(文/中寺暁子)