宇宙航空研究開発機構(JAXA)が20日、月探査機「SLIM(スリム)」が月面着陸に成功したと発表した。日本の探査機の着陸成功は初めてで、旧ソ連、米国、中国、インドに次いで世界で5カ国目。スリムは、チョロQで知られる「タカラトミー」とJAXAが共同開発した手の平サイズの小型ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」を搭載。月面を走行させる計画だが、その結果は…。宇宙開発に活かされた、おもちゃづくりで培ったノウハウとは?(この記事は「AERA dot.」に2023年12月22日に配信した記事の再配信です。肩書、情報等は当時のもの)。
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今年9月に鹿児島・種子島から打ち上げられた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「SLIM(スリム)」は、12月25日に月を周回する軌道に入り、来年1月20日の着陸をめざして飛行中だ。スリムは、チョロQで知られる「タカラトミー」とJAXAが共同開発した小型ロボット「SORA-Q(ソラキュー)」を搭載。おもちゃづくりで培ったノウハウを詰め込んだ手の平サイズのロボットが、月面走行に挑戦する。
JAXAなどによると、SORA-Qは野球のボールほどの大きさで、月探査機「スリム」が月面に着陸する直前に分離、月面に到達する計画になっている。
月面に着地したSORA-Qは、左右に割れるように変形。外殻部分を車輪のように回転させて走行する。移動しながら月面の様子を撮影し、それを別の探査ロボット経由で地球に送る予定だ。
タカラトミーでSORA-Qプロジェクトを担当する石井孝典さんは、
「われわれは、ロボット玩具『トランスフォーマー』に代表される変形技術や、『ゾイド』の動物のような動きをシンプルな機構で実現することを得意としています。そのアイデアがSORA-Qに活かされています」
と話す。
乗物などからロボットへ変形する「トランスフォーマー」シリーズが誕生したのは1984年。超ロボット生命体が宇宙を舞台に敵と戦う壮大なストーリーで、2007年に実写映画化されると世界中で大ヒットした。
「ゾイド」シリーズ(1983年発売)は恐竜や動物などをモチーフにした“メカ生命体”で、キットを組み立てると、ゼンマイやモーターによって生き物のように動き出す。
「宇宙産業とおもちゃ産業は全然違う分野のように見えますが、おもちゃの開発において大切にしてきたことと、宇宙事業において求められる要素が合致しました」
と、石井さんは語る。