伊藤:ストーカーに発展するのはいいと思うんですが、蝉に襲われるのは違う展開があってもよかった。蝉って急に〝ジジッ〟と鳴くし。
波津:セミファイナル(別名・セミ爆弾)などと言いますものね(笑い)。私は「落ちた卵は戻らない」。漫画にするのは少し難しいかもしれませんが、少女の視点からおばあちゃんに変わったり、途中までおじいさんがぬらりひょんに見えたりするという絵面がうまくいけば面白い。
漫画にして面白いか、小説のままのほうがいいのか
波津:「魔障探偵明野リン~校舎のサエコさん~」は、事件は面白いんですが肝心の探偵のキャラが、割とステレオタイプ。 美少女なのはいいんですが、キツイ口のきき方など、彼女のキャラをうまく面白く出せればシリーズ化できるかなと思います。
個人的に好きだったのは「夏の記憶」です。ただ、漫画にして面白いかっていうと、そこが疑問です。このままでいい、この文章のままで。小説に特化した方がノスタルジックな感じと、弟に対する切ない感じが表現できていいのでは。
馮年:今回はすごく面白くて、すごく楽しく読ませていただきました。◎は2本、〇は3本です。まず、「落ちた卵は戻らない」は、とても面白かったです。
波津:途中のミスリードも効いていますよね。
馮年:はい。映像を作る身としてはとてもそそる題材で、やりがいがあります。感情がしっかりと描かれているのが良かったのと、出だしもいい。
前半がやや冗長な展開なのかなと思っていましたが、うまく反転していましたし。1個1個の描写がとても効いていて、伏線になっている。これは映像にした時にすごく面白くできそうだと思いました。
もう1つの◎は「ネクロオパール」です。どちらかというと、スプラッター系で、非常にグロテスクな表現が読んでいて痛い痛い痛い……そんな痛みを感じながら読み進めました。「Saw(ソウ)」など、洋画に多い題材かもしれません。