思考することで恐怖がどんどん積み重なる
馮年:「縊鬼」は、設定がすごく面白いなと思いました。でも、波津先生と感想が似ているのですが、ストーリーでの積み上げがなく鬼が急に出てくるので、物語に入りにくい。
「縊鬼」の怖さが事前にセットアップされていれば、ひっくり返った時に、実は彼の方が被害者なんだっていう反転が威力を出すと思うのですが。急に鬼が出てきて、それが可哀そうなやつに見えてしまう。普段人間の顔をしているけれど、やっぱ実際は悪い鬼であるというような、主人公の彼の物語を知りたいです。
「形人間」は△をつけました。絵はすごく好みでした。冒頭の「恐怖とは考えることから生まれるかもしれない」も、とてもいい導入だなと。思考することで恐怖がどんどん積み重なっていくストーリーだったら面白いなと思って読み始めたんですが、意外と姉妹が考えていることの内容が薄くて、積み重ねもないのが残念。
普通、人形が来たら体温があるのか、体温があったら人間なのか人形なのか、呼吸しているのかどうかとか、いろんなシチュエーションが想像できるはず。そこからよりリアリティのある恐怖が積み重ねられるはずなんですけど、そこが低くてもったいない。
波津:冒頭のセリフが効いているんだったら、最初は怖くないところから始めなくてはいけない。一回怖くなったら、だんだん怖くなっていくという風に積み重ねていかないと。このマンガは最初から不審がっているので、それならば最初から逃げたほうがいい。
馮年:途中から「やばいぞ、こいつ」のような感じのほうが、より設定が活かせたな。
波津:設定が面白いのにお話がイマイチなのは新人にありがちで、 そこを指導するのが編集者なんです。じゃあ、どうやったらもっと面白くなれるの?って。
馮年:「あなたはわたしのかわいいこ」も△です。普通はおばあちゃんって孫を可愛がって愛するのが普通ですが、むしろ身体を乗っ取ろうとするっていう異常さが、面白いと思いました。