「おばあちゃんってこんな顔だったっけ」っていうセリフがあるのですが、終盤で「幸(サチ)ってこんな顔だったっけ」と重なり合っているところ、天丼(編集部注・トークやネタのボケの際に、同じことをあえて二度、三度と繰り返すことによって笑いを取るテクニックのこと)がとても上手だなと思いました。

応募作品を前に座る、選考委員の方々。(左から)馮年さん、伊藤潤二さん、波津彬子さん(撮影・上田泰世/写真映像部)

ホラーは社会性を盛り込んでいくのがワールドトレンド

馮年:ただ、祖母の価値観や考え方が旧時代的なのがもったいない。男性優位の中で生活をし、自由な人生を生きられなかったから、 孫の身体を乗っ取ってもう1度自分の人生を……という設定は怖いのですが、それに対しての孫側の価値観が見えなかった。

 映像作品で言うと、今、ホラーは社会性を盛り込んでいくのがワールドトレンドになっていて、そこをすごく攻められる題材だったのに踏み込みきれていなかったのが残念でした。

 理想は、祖母の旧時代的価値観を孫が提示して、祖母が最後に乗っ取ろうとしてくるところに孫が打ち勝つまでいってほしい。そして、打ち勝ったけれど、実は寄生されていた……そういうサプライズがあると、展開としては面白い。

 毒親ではなくて毒祖母という社会的なテーマが入っているので、もう1つ、2つは工夫できる作品です。

波津:考え方として、死んでしまったから身体を乗っ取る側までいっちゃったのかな。生きている時はそこまで思っていなくて、単に自分の好きなものを孫に与えていたのが、死んだことによって、おばあちゃんが踏み込んできたみたいな感じもあるのかなっていう。押し留めていた気持ちが、死とともに出てきてしまうという。

馮年:「離れ」も面白い。受験生が認知症の祖父をこっそり殺して、離れに居座った……まあ、それだけなのですが。ディテールの積み重ね方がすごく丁寧で、サクサク読めました。現実にありそうな話でもある。ただ、ラストがやっぱり唐突で……。

波津:漫画家の目からすると「離れ」は無駄な間が多いので、映像に近いのかもしれませんね。漫画家からすると、こんなところにコマを費やさずにラストをもっとちゃんと描きなさい!となりますね。

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