波津:グロテスクと耽美……。
馮年:完全にただグロいだけではなく、2人の女の子の関係性と、ネクロオパールなどのアイテムも美しく描いたらきっと面白いでしょうし。最後、切られた女の子がネクロオパールを製造している。
「私たちの愛の結晶を作って」というセリフや、水槽に入れられた左腕など、ビジュアルのインパクトとオリジナリティがあった。
伊藤:ネクロオパールは結局、主人公の手のなかにあったというオチなのかな。
馮年:はい。そうだと思います。ただ、リノとカノンという2人が、似ている気がするので、もう少し書き分けがあったらもっと良かった。〇は「蝉」。蝉の怖さから人間が怖いというアプローチはすごく良い。ただ、途中から展開が読めてしまう。
もう1つの〇の「自殺キラー」は、うまく構成がまとまっていると思いました。自殺しようとする人を逆に殺してあげるのですが、最後のひっくり返しで、実は供養というか埋めてあげていた。自殺山の伝説の息子の悲哀が感じられて、語りが上手ですね。
途中で首つりの死体が動き出して襲ってくるあたりは、 ちょっとゾンビものみたいでワクワクしました。
新宿の何処かにこういう場所が……
後藤:原作部門も本当に迷いに迷って。まず「蝉」、「夏の記憶」、「落ちた卵は戻らない」「からだ探し」「秘蔵の草双紙」「フェイクファミリー」「ネクロオパール」…… 何を基準に選べばいいのかと悩みました。
1つ選ぶとしたら、「ネクロオパール」です。左手切断とか、スプラッター的な描写はあるんですが、少女2人の美しさとピュアさが救いになっていて清々しいです。
そして、実際にこういうことがあるかもしれない。新宿の何処かにこういう場所があるかもしれないというリアリティとストーリー性が上手です。
「蝉」は、掴みは抜群。ただ、蝉が嫌いと言っている女性が、最後に蝉に助けられるところに違和感が(笑い)。まるで、鶴の恩返し的な……過去に蝉を救ったことあるのかな?
「夏の記憶」は、ノスタルジックな心地よさで非常に読みやすかった。「落ちた卵は戻らない」は、「ネクロオパール」と最後まで迷った作品です。少女だと思っていたのが、おばあちゃんだったのかという意外性は読めなかったですね。 そこが魅力です。