治療は点眼薬で眼圧が2〜3割下がれば、様子を見る

 どのような検査を経て、診断されるのでしょうか。

「受診時、まず受けていただく基本的な検査が四つあります。視力検査、眼圧検査、細隙灯(さいげきとう)検査、眼底検査です」(中澤医師)

 眼圧とは、眼の内側から外側に向かって膨らむ圧力のこと。眼圧検査では、点眼麻酔をして眼球の硬さを測定します。簡易型では、「スポッ」と音がして空気を眼の表面に吹きつけ、眼の反発力である眼圧を測ります。

 細隙灯検査では、角膜・前房・水晶体・硝子体(しょうしたい)を細部まで観察できます。角膜から硝子体までは光が通る透明な組織のため、細隙灯で光を当てると、炎症や混濁などの異常がわかるのです。

 眼底検査で緑内障の可能性があるとわかると、さらに視野検査を受けます。真っ直ぐ前を見たときにどこまで見えるか、片目ずつ確認するのです。そのとき、視神経が傷んでいるところと見えないところが一致していれば、緑内障と診断されます。

 治療の第1段階としては、多くが点眼薬となります。点眼薬で眼圧が2〜3割下がれば、そのまま様子を見ます。進行するかしないかを確認し、そのスピードにより治療を調整するのです。改善しない場合、レーザー治療や手術を検討します。

日本の眼底検査の受診率は先進国で最低水準

「歯磨きという文化は、定着しています。習慣化するよう子どものうちから教育をしていますよね。一方、眼は『見えて当たり前』なので、歯と比べるとあまり大事にされていません。日本の眼底検査の受診率は先進国で最低水準にとどまっているのです」(中澤医師)

 中澤医師によると、日本人は眼を大事にする意識が低く、一方でイギリス、オーストラリア、シンガポールなどでは眼を大事にする文化があるといいます。

 中澤医師が所属する東北大学は、そうした「目磨き文化」の醸成へ向けて、「VISION TO CONNECT拠点」という、研究と社会実装のための10年間のプロジェクトをスタートさせています。視野チェックゲームなどのアプリ・装置や、自宅を含めスーパー、駅などの日常生活で容易に目の状態をチェックできる仕組みを検討し、緑内障を含む眼疾患の早期発見に取り組んでいます。

「人生100年時代に、視覚を守ることは皆さんの幸せのために重要なことです。緑内障の発見が遅れて失明してしまうケースを、日本からなくしたいと考えています。そのため、みなさんには眼を大事にしていただき、信頼できる眼の主治医をもつことをおすすめしています」(中澤医師)

(取材・文/小久保よしの)

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